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令和元年度年3月3日開催 災害廃棄物対策推進検討会(令和元年度第2回)
環境省は3月3日、令和元年度「第2回災害廃棄物対策推進検討会」(座長・酒井伸一京都大学環境科学センター長)を開催した。昨年9月、10月と立て続けに日本に上陸して甚大な被害をもたらした台風15号および19号における災害廃棄物対応の検証をもとに、自衛隊との連携対応マニュアルの作成や、これまでの被災の災害廃棄物処理を経験し、知見がある自治体の人材を「災害廃棄物処理支援隊」として登録、被災自治体の災害廃棄物処理に関するマネジメント支援制度を設置する。一方、災害廃棄物処理計画の策定率が市町村の場合約半分に過ぎず、発災後の初動対応に問題が生じるケースも見られることから未策定自治体に対する策定促進事業を進める。
災害対応力の向上が大きな課題
新型コロナウイルスの感染者が拡大をみせつつある中での検討会は、一般傍聴(報道関係者は除く)をとりやめた形で開催された。開催にあたってあいさつを述べた環境再生・資源循環局の山本昌宏局長は「今回の説明は台風15号、19号をはじめとして多くの災害に見舞われ、その中で多くの課題が出てきましたので、そういった災害の対応、教訓をしっかり振り返るのが重要と考えまして、こういった時期でありますが、あえて開催をと判断させていただきました」と検討会開催は、いつ起きるともしれない災害への対応を急ぐ必要があるとの認識を示し、さらに「目の前の災害に加えて、中長期的にはさらに南海トラフのような巨大災害も想定されており、どうやって災害対応力を高めていくかが非常に大きな課題と思っております」と述べた。
防衛省との連携マニュアル作成へ
事務局より15号、19号の2つの台風による被害は15都府県に及び災害廃棄物発生量は約215万トンと推計され、処理完了目標時期で最も長いのは長野県の約2年間(令和3年9月)であることが示された。
災害廃棄物処理の検証から対策能力の向上が見えてきた部分がある。たとえば長野県赤沼公園や茨城県水戸市、栃木県大平町など7県23市町村では現場において防衛省・自衛隊・環境省・自治体が連携、調整して宅地や路上から廃棄物の撤去を実施した。このことを踏まえて、「防衛省と連携し、今後の災害に備える連携マニュアルの作成を進めている。今年4月に防衛・環境両大臣から公表の予定」(環境省)。災害廃棄物処理支援員制度を導入
また「災害廃棄物処理支援員制度」を立ち上げる。この制度は災害廃棄物処理を経験し、知見を有する地方公共団体の人材を災害廃棄物処理支援員として登録し、被災地方公共団体の災害廃棄物処理に関するマネジメントの支援等を想定している。支援員の活動は、災害廃棄物処理の方針に係る助言や個別課題の対応に係る助言・調整などのほか、災害発生時には被災地からの要請により派遣される。「運営主体は環境省が行う。令和2年度から試験運用していく」(環境省)としている。
災害廃棄物処理計画、未策定自治体へ策定促進
災害廃棄物処理計画の策定状況は、令和2年3月末の段階で都道府県が98%、市区町村は52%という実績。第4次循環計画では処理計画策定目標値を2025年度に都道府県100%、市区町村60%としている。災害廃棄物処理計画の策定は、発災時の初動対応に大きな影響を与える。事前に仮置場候補地を検討していなかったため、発災後も仮置場を設置することができず結局、すべての片付けごみを戸別収集することになってしまった。
令和元年の災害においては被災した自治体の多くが処理計画を策定しておらず、上記のような初動対応の遅れが指摘された。処理計画が策定されていない自治体は中小規模のところが比較的多い。その理由として、自治体の人員不足、マンパワーが限られていること、策定に係る知見がない、そもそも危機感がないなどが挙げられている。つまりマンパワー不足の中小規模の自治体に対して、単独での処理計画策定を促すだけでは限界があるのが実情だ。環境省としては、都道府県のリーダーシップのもと、処理計画未策定の中小規模自治体を対象とした処理計画策定事業を進めていく。環境省がモデル事業として選定し、実施を支援していくほか、災害対応において処理計画が有効に活用された例なども示していくとしている。
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平成31年2月7日開催 食料・農業・農村政策審議会食料産業部会食品リサイクル小委員会、中央環境審議会循環型社会部会食品リサイクル専門委員会(農水・環境省合同会合第20回)
「今後の食品リサイクル制度のあり方について」(案)を昨年12月にパブリックコメント(パブコメ)にかけたことから、寄せられた意見を踏まえて開かれた今合同会合では、事務局より「食品リサイクル法の基本方針改正案」が示された。大きなテーマである「食品ロス削減目標」については、事業系食品ロスについて具体的数字を上げて削減目標を提示したことが大きい。また、ここにきては食品リサイクルを実施する登録再生利用事業者が、水質汚濁防止法の疑いで逮捕されるなどの事案が発生したこともあり、排出事業者責任を含めた適正処理の徹底がより一層強化されることになりそうだ。今後、基本方針案をパブコメにかけた後、3月に合同会合が開かれる。
食リの取組み進む中で、またも不適正事案が発生
合同会合は冒頭、環境省の松澤裕大臣官房審議官があいさつ。食品リサイクルの実施率は平成28年度実績で、食品関連事業者から発生する食品廃棄物の約85%が再生利用されており食リ法施行時の「平成13年度と比べると大きな成果が出ている」。その一方で「食品ロスはSDGsをはじめとして国際的に関心も高まっている。先進国でも食品ロスをどうするか、政府に限らず民間ベースでの活動もはじまっている」。また「食リ法の関連を国内で見ますと、廃棄冷凍カツの不正転売事案といった問題もあった」とし、食リ法がスタートしてから環境変化が様々生じていることを述べた。
食品ロス削減については「家庭系は循環基本計画で定めたが、事業系については食リ法で定めるということで本合同会合で審議してきた。年末に食品リサイクル制度のあり方について案を取りまとめて、その後パブリックコメントを経て今日に至っていると、おさらいするようにこれまでの経緯を説明した。
そして最後に、この1月に愛知県名古屋市の登録再生利用事業者である「バイオプラザなごや」による不適正事案を報告した。「(バイオプラザなごやは)水質汚濁防止法違反の疑いで逮捕されています。この事業者、中部圏を中心に食リ法に基づいてリサイクルを行っている登録再生利用事業者であるとともに、廃棄物処理法に基づく許可業者です。フェアな形で排出事業者の皆さんに適正料金を払っていただきリサイクルをレベルアップしていこうという中で、また廃棄物処理法の中でも不適正処理業者を排除して優良業者を育成していこうという流れの中で、このような事案が起きたことは私ども非常に遺憾だと思っています。この案件につきましては、名古屋市、農水省、環境省が連携してきっちり対応したいと考えています」とし、対応についてはしかるべきタイミングで、できればこの合同会合審議の中でも報告していきたいと述べた。事業系食品ロス削減目標、2030年度に半減
今回事務局より提示された「食品リサイクルの基本方針改正案」は、①食品循環資源の再生利用等の促進の基本方針、②再生利用等を実施すべき量に関する目標、③再生利用等の促進のための措置に関する事項――の3項目で構成されている。
①の再生利用の促進の基本方針については、飼料、肥料に加え菌床が新たに付け加えられたことが特徴的。また事業系食品ロス削減については②の量に関する目標に示されており、「2030年度を目標年次として、サプライチェーン全体で2000年度の半減とする」目標を新たに設置した。ここでいう事業系食品ロス半減の目標とは、食品製造業、卸売業、小売業、外食産業といった各業種それぞれに対して半減が目標という考え方ではなく、食品産業全体で半減が目標ということだ。
具体的な数字でいうと、食品産業の2000年度の食品ロス量は547万トンと推計される。これを「現在の推計手法で機械的に試算すると」(農水省)、2030年度には223万トンとなるとしており、半減達成は可能との見方を示している。定期報告の中に不適正処理防止の取組みなど
「再生利用等の促進に関する基本方針案」は、「再生利用の優先順位」や「再生利用を実施すべき量に関する目標」「再生利用等の促進のための措置に関する事項」など5項目17ページで構成されているが、全体を通してみると排出事業者責任や食品ロス、不適正処理の防止などに関する追記が目立つ。たとえば2ページ目に「登録再生利用事業者による食品廃棄物の不正転売事案を契機に、食品廃棄物の再生利用を含めた適正な処理に係る排出事業者責任の徹底の必要性が改めて強く認識された」との記述が見えるし、9ページの国の役割では「食品関連事業者に対して食品廃棄物の適正処理に係る排出事業者責任のあり方について、また再生利用事業者等に対しては関係法令の遵守の徹底について、継続的に周知する」となどの記載がいくつか散見される。
また「定期報告の運用」の中には、「国は、食品廃棄物等多量発生事業者から報告された食品廃棄物等の発生量及び食品循環資源の再生利用等の状況並びに食品廃棄物の不適正処理の防止に係る取組の実施状況に関するデータを、業種・業態ごとに整理し、公表すること……」などが追記された。出席委員から出された意見
委員からの意見としては食品ロス削減の推計の仕方がわかりにくいという指摘があったが、全体としては基本方針改正案に異論は出されなかった。熱回収について今井委員(食品産業センター)が、「熱回収は75㎞圏内とかカロリーの設定もあり厳しすぎる。要件を見直してほしい」と要望。また東京農大准教授の入江委員は食品ロスについて「情報の集約サイトがない。EUは消費者向けとか、事業者向けとか全体でつくっている。具体的に多くの人が取り組めるアプリが必要と思った」と感想を述べる。また愛知工業大学の小林委員は「再生利用の手法に菌床化が新たに入ってきた。ユニークだしトピックだと思う。日本の国土が影響している。3分の2を森林が占める。だから菌床ができる。国際的にもアピールできる」と評価した。
また西山委員(日本フランチャイズチェーン協会)は、「食品リサイクル施設が立ちいかなくなったというものもある。食品産業がどういう取組みしても施設が持続的でないとだめだ。もう少し自治体が関与してほしい。行政がリサイクル施設を持続可能な運用にしてくれれば我々事業者もやりやすい」と行政関与の必要性を説く。全国知事会の古尾谷委員は少子高齢化や人口減が進む中で「施設が老朽化したら建て替えは無理。広域化が必要。地域連携が必要という視点で取り組む必要がある」と自治体の見方を述べた。「可能なら(食品の)納品期限や延長化など商習慣の見直しを書き込んでほしい」(牛久保委員・日本有機資源協会)といった意見も出された。
合同会合は食リ法基本方針改正案をパブコメにかけて、その結果を踏まえて3月に再度開催する。 -
平成30年12月17日開催 食料・農業・農村政策審議会食料産業部会食品リサイクル小委員会、中央環境審議会循環型社会部会食品リサイクル専門委員会(農水・環境省合同会合第19回)
合同会合のまとめにあたる「今後の食品リサイクル制度のあり方について」(案)が事務局より提示された。大きなテーマは食品廃棄物の発生抑制・再生利用等を推進するための具体的施策。定期報告データの公表、発生抑制、再生利用、食品ロス削減などについて記されているが、17日の合同会合では、排出事業者責任、外食産業の再資源化、熱回収の位置づけ――などが主な議論となった。制度のあり方(案)は委員の意見を踏まえて、一部分修正されパブリックコメント(意見募集)にかけられることになった。
「制度の在り方」(案)ではまず、食リ法制度の前回の見直しから4年が経過した中で、第4次循環基本計画の記載に基づき、事業系の食品ロスの削減目標を定める必要が生じた。本来なら5年ごとの見直しだが、こうしたことから1年前倒しで今回、合同会合を開催して審議するに至ったと経緯を説明している。
食品廃棄物の発生抑制・再生利用の現状と課題
「食品廃棄物の発生抑制・再生利用の現状と課題」では、年間100トン以上の食品廃棄物を排出する事業者の定期報告結果によると、発生抑制は一部事業者を除き概ね目標達成がなされているとしているとしており、再生利用でも、食品製造業、食品卸業、食品小売業の3業種は平成31年度目標値を達成ないしは目標値に近づきつつある。だが、外食産業だけはかなり低調。外食産業は目標値50%に対して平成28年度時点で23%にとどまっている。再生利用が進まない理由としては「周辺に再生利用事業者が存在しない」「市町村の一廃処理手数料と比べて再生利用事業者の処理料金が高い」「食品廃棄物の発生量と肥飼料の需給が合わない」「再生利用事業者の施設が迷惑施設として地元の理解が得られない」などを挙げている。近年は「登録再生利用事業者ならびに再生利用事業計画認定(リサイクルループ)両制度」ともに、横ばいないしは減少傾向にある。
食品廃棄物は再生利用促進とともに、適正処理を徹底することが重要だが、平成28年1月には登録再生利用事業者による食品廃棄物の不正転売事案が起きた(ダイコー事件)。「この事件は廃棄物処理法の指導権限が及ばない第三者が関与していたと思料される」としており、こうした事案の再発防止に向け平成29年に廃棄物処理法及び食リ法の判断基準省令を改正した。さらに平成29年1月に「食品関連事業者向けガイドライン」が取りまとめられ、同年3月21日には廃棄物対策課長及び産廃課長名で「排出事業者責任の徹底について」の通知が発出された。が、食品関連事業者のアンケート結果によると、ガイドラインに示された取組みのうち、排出事業者責任の徹底に係る項目の実施状況が不十分であることが判明している。発生抑制・再生利用を推進するための具体策
発生抑制・再生利用を推進するための具体策について、ここでは踏み込んだ表現は見られない。「発生抑制対策」としては、「食品のサプライチェーン全体でその削減に取り組んでいくことが重要」としており、また市町村においては「一般廃棄物処理計画において、食品廃棄物の再生利用等を適切に位置付け、その促進のための方策を講じていくことが重要である」といった、原則論的な書きぶりになっている。
「定期報告データの事業者ごとの公表」については、年間の食品廃棄物発生量が100トン以上の事業者を対象にしているが、外食産業は少量発生の事業社数が多い。このため外食産業については「精度よく食品廃棄物の発生や再生利用の状況について把握できることが重要」としている。
「発生抑制の目標値」については、既に目標値が設定されている31業種は概ね9割の企業が達成しており、目標値が設定されていない44業種については最新のデータを精査し、目標値の設定が可能かどうか再度検証する。
発生抑制の取組みを一層促進するため、とくに可食部の「食品ロスの削減目標」を定めることが重要であるとしており、需要予測サービス普及による在庫の適正化、フードシェアリングなどによる食品提供事業者と消費者のマッチング、さらにフードバンク活動の推進対策を進めることが有効としている。とくに外食産業においてはドギーバッグの導入の取組みを勧めている。
「再生利用実施率」については外食産業がポイントになる。食品廃棄物発生量100トン以上の外食産業の再生利用実施率は38%と比較的高いため、「対策を講じる上では多量排出事業者とそれ以外に分けて検討することが重要」としている。
「登録再生利用事業者制度」は、登録業者からメリットが登録に伴う事務負担に見合わないとする声も聞かれることから、事務負担軽減の検討をする。
また、食品廃棄物の再生利用促進への市町村の対応としては、地域循環共生圏の実現に向けた取組をする上で一般廃棄物処理計画に再生利用の推進方策を位置づけることが必要とした。
「適正処理の徹底」については、排出事業者自らが廃棄物処理の根幹的業務を実施していく体制の整備が必要だが、これを踏まえ国は、食品関連事業者に対して、例えば不正転売事件を受けて改正された判断基準の省令の遵守に係る取組みの状況を公表するなど、排出事業者責任の徹底を求めていくことも重要としている。
なお、「家庭系食品ロスの削減」について国においては、事業系食品ロスとあわせて、家庭系食品ロスの削減目標実現のための計画をとりまとめるとしている。アドバイスする専門職を廃掃法の中で認知すべき
事務局からの「案」の説明に関して全清連の山田委員はダイコー事件に鑑み「排出事業者責任の徹底についての指導はどうなっているのか」と質問。また石川委員(神戸大学教授)は、指導権限が及ばない第三者が介在することについて「廃掃法全体についてコメントしたい」と次のように語った。「第三者、いわゆるコンサルですね。排出者責任の徹底はその通り。そして小規模食品事業者がリサイクルを進めるのは困難ということで議論してきた。廃掃法と食リ法の正しい知識をもって運用してもらうということだが、小規模事業者にそれを求めるのはどうか。大規模事業者なら本社機能があるから可能だろうが。現実的に(小規模事業者に)そこまで求めるのは無理かなと。山田委員が言ったように、規制が及ばないとなると悪い方向に行く。今後考えてほしい。排出事業者責任の徹底はそうなんだが、出来ないことを要求しているのではないか。専門知識を出してアドバイスするという人を廃掃法の中で認知するというのが私の意見です」。
この意見に山田委員も賛同。「会計士は我々をサポートするということで(仕事を)やっている。しかし(廃棄物の)管理会社はすべて任せてくれと。なぜ廃棄物の分野だけどんどん(管理会社が)入ってくるのか。(小規模排出事業者を)サポートしてやるのは大切なこと。廃掃法の中に組み込んで責任ある立場でやることも考えてもいいのでは」と述べた。
牛久保委員(日本有機資源協会)は「食リ法制度で運用している現場で、(排出事業者責任を)どれだけ理解しているのか。廃掃法あって食リ法ということをもう少し書き込んでいくともう少しはっきりすると思う」とした。熱回収を求める意見も
食品産業センターの今井委員は熱回収について意見。「食品は(熱回収時に)カーボンニュートラルだ。熱回収をもっと評価してもらいたい。容器に入った食品廃棄物が排出されるものもある。食品廃棄物処理は熱回収も大事だと書いてもらいたい」。杉田委員(杉田建材)も熱回収を評価する。「施設つくるとき、肥料化施設はできないが熱回収の施設なら出来るということもあり得る」。
事業系食品ロス削減目標設定の考え方
合同部会の主眼テーマである「事業系食品ロス削減目標設定」については、考え方として示した。①過去の取組みを評価すること。②第4次循環基本計画において、家庭系は2000年度比半減目標を掲げたことを踏まえ、整合性をとる必要がある。③諸外国との比較及び食品ロスの捉え方の整合性を図る。たとえばEUや英国は飼料化することが食品ロス削減手法として位置づけられているが、日本では飼料化は食品ロス削減の手法とはならない。ほか。
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