廃棄物区分の見直し
問題提起
problem

廃棄物区分の見直し

廃棄物の「区分の見直し」は、内閣府に設置された「規制改革・民間開放推進会議(現・規制改革会議)」からの要望によるもの。平成18年3月31日に閣議決定された同推進会議の3ヵ年計画(再改定)では廃棄物の区分の見直しの事項として、①事業系一般廃棄物である廃木製パレットを産業廃棄物とする方向で検討すること。②その他の事業系一般廃棄物である木くずの一廃と産廃の区分についても、その排出実態や排出事業者の意見を踏まえて検討の上、見直す――と記してある。これを踏まえ環境省は平成18年6月、中央環境審議会廃・リ部会の下に「廃棄物の区分に関する専門委員会」を設置、検討を進めた。また専門委員会は同時に、バーゼル規制対象物を再生利用認定制度の対象とするかどうかの判断方法の見直しも検討。これも民間開放推進会議からの要望だ。ちなみに廃棄物・リサイクルに関する「規制改革・民間開放推進会議」の3ヵ年計画での要望事項は24項目に及ぶ。この中には「一般廃棄物処理における民間参入の推進」という項目も入っている。

初回から荒れ模様

平成18年7月25日に開催された第1回会合は初回から審議の進め方をめぐって荒れ模様の展開だった。専門委員会の委員は学識経験者や経団連、全都清、自治労、東京都のほか、処理業界を代表して全国清掃事業連合会(全清連)、全国産業廃棄物連合会(全産廃連)からも委員が出席。さらに今回は臨時メンバーとしてリース事業協会、トラック協会など4団体の委員が参加した。木くずの処理実態を調査・作成した資料に基づき環境省が説明したあと審議。
終盤近くになって「中国から入ってきている家電の下に敷いてあるパレットはリユースもきかないと聞いている。ひとつずつ片付けていく必要がある」と全清連・山田委員が提案。これに対して全産廃連の三本委員が「木質ということでは変わらないので、すべて一緒にやったらどうか」と即座に反対意見を出す。両者の間で火花が散った。一廃業界は木くずを品目別に審議することにより一廃・産廃の区分けしようとする。これに対して、産廃業界は包括的審議によりすべて産廃に移行したいという考えだ。細田衛士座長(慶応義塾大学経済学部教授)が「深いテーマなので丁寧に審議する必要がある」と引取った。

廃木製パレットと木製家具は産廃に。剪定枝などその他の木くずは一廃

その後開かれた専門委員会では木くずを、①廃木製パレット、②オフィス家具、③その他の木くず(剪定枝・伐採木・流木)の3つに分類。関係者のヒアリングや処理実態のアンケート調査などをもとに検討を重ねた結果、平成19年3月28日開催の第5回専門委員会で「論点整理案」が出された。事実上の「結論」といってもよいが、この専門委員会で「廃木製パレット」とそれに付随して排出される「梱包用木材」、それに「木製家具」を産廃に区分し、剪定枝・伐採木・流木の「その他木くず」は一廃とすることとした。年間排出量約88万トンと推定される廃木製パレットは、市町村が受け入れに際し大きさや数量に条件を設けていたり、処理困難性が認められるためだ。またリース業などから発生する木製家具も排出事業者による処理が多いと考えられるため産廃にした。剪定枝・伐採木・流木のその他木くずについては、総じて市町村の責任の下で一廃処理業や排出事業者が処理を行なっていること、剪定枝などは市町村自らが排出者になることも一般的ということで、一般廃棄物の区分とした。

産廃と同一性状の一廃を、産廃業者処理は不適当

これまでの議論で重要な課題が2つあげられていた。①産業廃棄物と同一性状の一般廃棄物を産業廃棄物処理業者が処理すること。②廃棄物の区分を排出事業者の選択性とすること。これらについて「論点整理案」では「適当でない」との見解を示した。その理由として①は一般廃棄物の処理責任は市町村にあるにもかかわらず、市町村が許可や委託を通じて指導監督できない者に処理を行なわせることとなるためと述べ、②については廃棄物の区分を排出事業者の選択に委ねたら責任の所在があいまいになり、市町村ごとに廃棄物の区分が異なるなど判断に支障が生じると指摘した。

バーゼル法上の有害性を含む非鉄金属を再生利用認定制度の対象に

専門委員会のもうひとつの審議テーマであった、バーゼル法上の有害廃棄物を含む非鉄金属を再生利用認定制度の対象物とするか否かについては、関係業界のヒアリングや審議を重ねた結果、再生利用認定制度として適用することとした。この件は鉄鋼業界と非鉄製錬業界から出されていたもので、非鉄製錬業界はすでに既存インフラの製錬工程でスクラップや廃棄物から鉛、亜鉛、カドミウム、銅など約30種類の金属回収を実施している現状があり、これらはほとんどがバーゼル規制物であるということが大きい。
今回、再生利用認定制度を要望している事情について環境省にわかりやすく説明してもらった。「バーゼル法では有害だが経済的に価値があるということで日本に輸入しているものがある。しかし日本では廃棄物処理法の規制があり、その規定に即して処理しなければならない。つまり業の許可や施設の許可が必要になる。これではリサイクルが進まないということで、バーゼル法で輸入した有害廃棄物処理について再生利用認定制度の適用を求めているわけです」
再生利用認定制度では、認定を受けると廃棄物の収集運搬・処分に際しマニフェストの交付を必要としないが、今回の場合はマニフェストの公布を義務付ける。相当量の残さの発生に加え、バーゼル法での有害廃棄物を含む廃棄物を対象にするためだ。さらに環境大臣との自主協定締結を結ぶほか、受け入れ、処理状況などについて情報公開することなども組み入れた。