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令和5年7月28日開催 静脈産業の脱炭素型循環システム構築に係る小委員会
環境省は「静脈産業の脱炭素型循環システム構築に係る小委員会」を立ち上げ、7月28日に初会合を開いた。2050年CN(カーボンニュートラル)に向けた取組みがあらゆる分野で進められており、資源循環についてもCNを同時に進めていくことが重要な課題となっている。CNと資源循環を一体的に取り組む静脈産業の脱炭素型資源循環システムを構築するための具体的な施策のあり方について審議する。年内を目途に小委員会での意見を取りまとめる。 学識経験者など17名で構成される委員会には、全清連三井会長も委員として出席、意見を述べた 。
3つの観点について議論求める
開催に先立ち環環境再生・資源循環局の角倉次長が一言あいさつを述べたあと、事務局が、75ページに及ぶ資料を使い「脱炭素に向けた資源循環の状況」を説明。今年4月に札幌で開催されたG7気候・エネルギー・環境大臣会合で合意された内容や、そのあとの広島サミットでは重要鉱物や原材料の回収・リサイクル量を増やすことなどが打ち出されたこと。特定有害廃棄物等の輸出入に関する国際規制の動向や海洋プラ問題。廃棄物分野のGHG(温室効果ガス)排出量。資源循環政策の経済成長への貢献。資源循環で市町村と企業が協定を結ぶことで地域活性化が図られている例。資源循環や脱炭素に係る情報の活用等々――。 こうした様々な状況を説明し、それを基として最後のページに記した「議論いただきたい事項」に触れ、どのような支援が必要か、①~③の3つの観点を示して委員に意見を求めた。①今後の我が国の資源循環を考える上で、とくに考慮しておくべき状況として他にどのようなものがあるか。②静脈産業の脱炭素化の取組みとして、とくに注目すべき取組みはどのようなのがあるか。③脱炭素化と資源循環を進めるために、静脈産業はどういった情報をどのように発信することが必要か。
適正処理が担保されての資源循環と三井会長
多くの委員から様々な意見やコメントが出された。 情報について所委員(早大教授)は、「情報発信のスピード化が大事。産官学の連携が今以上に必要。横のネットワークで国内の静脈をより育成し、力をつけていくことが必要」とした。情報発信の大切さは静脈企業の武本委員(㈱シューファルシ)からも出されたが「静脈側は情報発信しているが、企業の方は興味がないのか届かない」といった現実を語った。 また、廃棄物処理法が厳格化すぎるための影響を指摘する委員もいた。末吉委員(エシカル協会)は、廃掃法が厳格化なために「静脈産業が循環型社会の構築、循環資源に貢献したいと思ってもパフォーマンスが発揮できない。経済的に報われないことが起きているのではないかと思う」と現行の法のあり方について言及。 全清連の三井会長は、家庭ごみ、事業系ごみ収集運搬の委託を受ける業者の全国団体であると全清連を紹介したのち、「地域に密着して活動しており、行政・市民・お客に対して存在価値を示すことのもと、地域のCN、ローカルSDGsに全清連として数年前から取り組んでいる」とし、こうした中で「プラ循環促進法を成長の機会と捉え重要事業のひとつとして取り組んでいますが市町村はまだまだ温度差があり、課題や悩みがあるのが実態。環境省におかれては現場の意見をくみ取っていただき、地に足のついた制度設計をお願いしたい」と注文。さらに「廃棄物適正処理が担保されてはじめて真の資源循環が成立することを忘れずにいただきたい」と追加した。
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令和5年6月30日開催 地域脱炭素を推進するための地方公共団体実行計画制度等に関する検討会
2030年CO2の46%削減、2050年CN(カーボンニュートラル)に向けて、環境省はあらゆる施策を推し進めており、そのひとつとして「地方公共団体の脱炭素実行計画」がある。地方公共団体が脱炭素に取組むことはCO2削減の面から非常に重要との観点から、改正温対法に伴い地方自治体が太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー設備設置に適したエリア(再エネ促進区域)を選定して、地方創生につながる再エネの導入促進を図ろうというものだ。これは「地域循環共生圏」(ローカルSDGs)とも密接に関係してくるし、一般廃棄物の業界にも関連性がある。6月30日には表題の検討会の第3回目が行われた。今夏に検討会としての取りまとめが行われる。
自治体の取組み、思うに進まずか
検討会の冒頭、環境省の白石審議官が一言あいさつを述べた。審議官は「この検討会の趣旨についてもう一度おさらいしたい」とし、CO2削減に向けて地域全体で脱炭素を進めていくためには地方自治体がどういう計画制度で進めていくか、その制度の中に地域の再生可能エネルギーといったものを促進するための枠組みとしての地域制度があるが、この現状がどうなっているか再点検すると語った。しかしながら、「地域における再エネのありようをみると、地域コミュニケーションの問題などで、地域の再エネがうまく進んでいないという指摘もある」と現状を述べ、「そういう面も含めて問題意識をもういちど、地方自治体の皆さん、関係する業界のみなさん、いろんな方々に(検討会に)参加いただき、足元から見つめ直すという作業を進めています。今年の夏あたりに取りまとめをしたいと思っていますが、その検討会です」と締めくくった。
エネルギーで人と人をつないでいく
第3回会合では、「太陽光」「風力」「地熱」などの再エネから9件の事業者がヒアリングを受けた。その中の「たんたんエナジー」(京都府)は、エネルギーと人をつなぐパブ機能を果たすなど、様々な工夫で地域密着型のユニークな事業展開をしており、地域循環共生圏をつくっていく上でも参考になりそうだ。 「たんたんエナジー㈱」は2018年の設立という比較的新しい会社。資本金は5100万円だが、株式を一番多く持っているのは立命館ソーシャルインパクトファンドの33.3%、次いで個人(この問題に取り組む研究者など)の52.4%となっている。同社の木原氏は「研究機関が社会実装のためつくった会社という意味合いが色濃い」と語る。福知山市からも一部出資を受けており、地域新電力として連携強化を進めている。
市民からの出資を入れている
ここ2年ほど、市民出資型のオンサイトPPA(需要家の敷地内に発電設備を設置して電気を提供する仕組み)事業を実施しているという。福知山市の公共施設5カ所に計500kWの太陽光発電施設を設置した。また蓄電池も設置して地域防災力を高めるということもやっている。「これは単に私たちが設置しているというのではなく、市民出資を入れているというのがひとつのポイントです」(木原氏)。 「出資していただいている方にお金の面でのお返しはしていくが、それだけではなく、福知山で生み出された新たな産品をプレゼントしていくということで、エネルギーを通じて様々な人をつないでいくということをやっているのが特徴かなと思います。観光クーポンも差し上げています」
SDGsの取組み事業者を支援
地域の防災、地域の活性化に役立つ取組みを進めつつある。また、金融機関から融資を受け、そこで得られた収益を地域に返していくという形で再エネの利用向上を図っている。 個人の顧客に対して丹波、丹後でとれた、おいしい産品をプレゼントしている。「こういうキャンペーンをやることで地域の魅力を多くの方に知っていただいて、エネルギーを通じてこうした事業とつないでいくということをしています」 さらに福知山市と連携する形で、「個人の顧客の売り上げの一部を福知山市内でSDGsの推進に取り組んでおられる事業者さん、福知山市が認定する団体に寄付をして応援をする。今年は子育て支援をされているNPO法人に寄付をさせていただき、地域の取組みのお手伝いをしているところです」 地域に根差した再エネ導入事業は「地域循環共生圏」と相通じるところがある。
自治体を支援する中間支援組織が必要
自治体がどこの場所に再エネ設備を設置したらいいのかというゾーニングに関わったり、地域事業に関わっている中で感じている課題について、木原氏は次のように述べる。 「再エネは本来便益をもたらすはずなのに、(地域では)そうではないと思われている。再エネの需要度が極めて低い。もっというと、(再エネ)やめてくれたらいいのにという雰囲気が、とくに風力発電の反対運動が起こっている地域には強いなあと感じています。その中でゾーニングをする自治体の方からは板挟みになってしんどいという、生の声が聞かれます」 意見としては、自治体の支援ができ、ノウハウを蓄積して近隣に波及させるための「中間支援組織」が都道府県単位で必要と説いた。専門家の派遣だけでは不十分で、とくに参加・合意形成をデザインできる人材が不可欠とした。中間支援組織の必要性については検討会の大塚座長も賛同していた。
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令和5年6月30日開催 環境省中央環境審議会政策部会
第六次環境基本計画の策定に向け検討を開始した環境省の中央環境審議会総合政策部会(高村ゆかり部会長)は、6月30日の会合で慶應義塾大学環境情報学部の安宅和人教授からヒアリングを行った。安宅教授は東京大学卒業後、マッキンゼーを経て、ヤフーに入社。幅広い商品・事業開発に関わるなど経歴はやや異色。環境と経済に通じており、内閣府デジタル防災未来構想チーム座長を務めるなど守備範囲は広く公職も多い。「残すに値する未來」と題し、「水と空気の循環」「ほぐす土木」「景観価値の視点」等々、これまでにない切り口で環境問題について述べた。
7割近くある森の価値は空間維持機能
安宅氏はいくつかの事柄について語ったが、「森林と海」それと「景観の価値」に関することが案外興味深い。 氏は語る――地球上の生命体のほとんどは地上にあり、海はほとんど空っぽで、しかも海の栄養値を支えているのはほぼ陸上の植物であるというのは自明の理です。すると論理的に言っても森が非常に重要なわけです。ここは海と森をセットで考えるという視点は、森林大国日本としては当然考えるべきですが、もしそういう議論があまりされていないとしたら、これは非常に重要と思う。 で、土があるところに生命はいる。土を大切にするというのは森の話と表裏一体であって、森の価値というのは林業の議論しかされないですが、林業はぼくが調べている限り、日本中どこ行ってもアウトプットの10倍以上の金がかかっているので採算とれない。むしろ森の価値は空間維持機能にあるのに全く違う議論になっている。 日本は土地の7割近くが森なわけですから、先進国で異常なぐらい高い割合の森があるにもかかわらず、森のマネジメントが全くできていない。残念です――
価値ある土地をつくる、景観の価値は重要
海外の景観なども紹介しながら、――景観が美しいと人の気分も良くなるし、観光客も来る。結果経済も回る。景観には価値がある――というのが氏の持論で、当然のことなのだが、環境問題を語る上で意外とこの視点は抜け落ちている。 ――(景観が)美しくないと人にとってウザイだけの空間になってしまう。十分に美しい空間をつくらないといけないんですが、今まで環境の議論でそこまで明確になっていないと思います。景観価値の議論は大変重要だと思います。たとえばアメリカで一番美しい小さな町と言われているウッドストックは、日本の農家ならタダ同然のようなところが何億円で売ったりしています。十分価値のある土地をつくっていく、これは重要です―― 多くの委員から氏に賛同する意見、質問などが出された。
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令和5年5月29日開催 環境省中央環境審議会政策部会
環境省の中央環境審議会政策部会(高村ゆかり部会長)は5月29日、会合を開き西村環境大臣から諮問された環境基本計画の見直しについて審議をはじめた。実質的に第六次環境基本計画についての検討ということだ。1年かけて審議していく。最終的には閣議決定となり、政府全体で共有のものとして5~6年間の道しるべとなる。今の第五次計画に加え、あるいは修正する部分は修整して新たな方向性を定めていく。
新たな方向性を定めていく
「環境基本法」は、環境の保全について基本理念を定め、国、地方公共団体、事業者ならびに国民の責務を明らかにするとともに、環境保全に関する施策の基本事項などを定めている。地球規模の環境問題に対応し、環境負荷の少ない持続可能な社会の発展や地球環境保全の積極的な推進を基本理念としている。環境保全に関する法律としては廃棄物・リサイクルに関するものなど様々あるが、法体系としてはそのような法律の最上位に位置するのが「環境基本法」であることは周知のとおりだ。この環境基本法15条に基づき、環境保全を総合的かつ長期的な施策の大綱等を定めるのが「環境基本法」で、約6年ごとに見直しが行われており、今年度が見直しの時期にあたる。 当日の部会では、西村環境大臣からの諮問文が読み上げられたのち、環境政策課の上田統括官が次のようにあいさつ。「いまの環境基本計画は地域循環共生圏という、環境だけではなく、経済、社会も合わせて持続可能な社会づくりという視点で政策を進めていこうというのが基本コンセプトであったと思う。今の第五次基本計画に加えて、または変えてどういうコンセプトで進めていくのか議論してもらいたい。新しい方向性を定めていきたい」。
第一次計画から振り返り
事務局から「第五次環境基本計画の見直しに向けた論点整理」が説明された。第六次環境基本計画の性格は2024年?2030年を期間として想定されること。1994年の第一次環境基本計画から今回は、30年の節目で策定されることなどが説明された。 第一次計画から今の第五次計画までを振り返り、その時々で環境基本計画が目指す社会を紐解き、環境と経済の関わりも時系列で紹介した。国際情勢、環境面の現状と課題、気候変動、生物多様性、循環経済、公害、国民意識、科学的知見、人口の変化、経済面、自然資本とWell-being、循環共生型社会の深化…等々について種々のデータを示しながら解説した。
地域循環と脱炭素先行を融合
委員からは「地域循環共生圏モデルと脱炭素先行地域の事業が、それぞれになっているという感じがする。この状況はもったいない。地域循環のところに脱炭素はどうですかというようなつながりをもつような形にしたらどうか。地域循環共生圏を提唱した大きな理由は、それぞれの環境政策が脱炭素、資源循環、自然共生がばらばらになっている。これはまずいだろうということからの発想だった。そのところにもう一度戻って考えを進めていくことが必要と思う」と脱炭素と地域共生の融合を提案した。また「地域循環共生圏を世界に広げていこうという考え方をしてもいいのではないか」と新たな発想も提示した。
文化を入れた形に
「環境、経済、社会ということで前回(の環境基本計画)はきたが、それに文化を入れた形にしたらどうかと考えていた。これは音楽とか演劇といったことではなく、地域文化とか伝承とかその辺を入れたらどうかと」いった意見も聞かれた。
厳しい意見も出された
かなり厳しい指摘をする委員も。「ここに書いてあることと実態は違う。世界の環境は悪化している。しかし基本計画にはいいことしか書いていない。少し検証してもいいのではないか。第一次計画で目指すべき社会というのが書いてあるが、CO2排出量も減らないし地球環境は悪化している。実態と施策レベルに乖離がある。政策をつくっても悪化していると反省して、それを検証することが大事だと思う」 「生物多様性は気張らずに個人個人が身近に感じればいい。そのことが大切ではないか。たとえば朝顔の種をまいたら育って、朝顔の花が咲いた。これって生物多様性だよね。でいいと思う」 。
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令和5年4月11日開催 中央環境審議会循環型社会部会 第45回
環境省の中環審循環型社会部会(酒井伸一部会長)は4月11日Web形式による会合を開いた。議題は「廃棄物処理法に基づく基本方針の変更」「次期廃棄物処理施設整備計画の策定」が主なもの。廃掃法に基づく基本方針の変更は7年前の2016年改正が前回だった。その後2050カーボンニュートラル脱炭素化の推進や地域循環共生圏の構築など廃棄物処理を取り巻く状況が変化していること、さらに廃棄物処理施設整備計画が検討の時期を迎えていることとも相まって今回見直しを行う。
基本方針の軸は2050年CN脱炭素化
「廃棄物処理法に基づく基本方針」の構成は、1.「廃棄物の減量その他その適正な処理の基本的な方向」、2.「その施策を推進するための基本的事項」(国民、事業者、地方公共団体及び国の役割)、3.「廃棄物の適正な処理を確保するために必要な体制の確保」(一般廃棄物の処理体制の確保、産業廃棄物の処理体制の確保)、4.「災害廃棄物に関する施策と各主体の役割」――などで組み立てられている。 今回の変更案とする部分はリードで記したように2050年CN(カーボンニュートラル)脱炭素化の推進が軸になっている。そのため「基本的な方向」のところで、「2050年までの脱炭素社会の実現が急務」「廃棄物分野においても脱炭素化を推進する」という文言を新たに書き入れた。
動静脈の連携の推進
静脈連携の推進ということでは、「デジタル技術の活用により静脈側の廃棄物処理・リサイクルの取組みと動脈側の製造・販売の取組みを有機的につなげ、資源循環の取組みを積極的に進めていくことが重要」と書き込んでいる。 地方公共団体の役割としては、とくにプラスチックについて「プラスチック資源循環促進法」の趣旨を踏まえ、「プラスチック使用製品廃棄物の分別収集及び再商品化のための体制や施設の整備など必要な措置を講じるよう努めるものとする」と追記している。さらに廃棄物処理の広域化に加え「集約化」という文言を加えた。 こうした変更案について委員の一人から辛口の意見が出された。「国民や事業者に対して、こうしたことが大事であるということがとても多いように感じる。こうしたらいいのではという意見を聞くことができる制度にしたらどうか。一方通行ではなく、双方向でのやり取りが重要ではないかと思った」
廃棄物処理施設整備計画は脱炭素と資源循環が柱
もう一つの議案である「廃棄物処理施設整備計画」の策定は、廃棄物処理法の基本方針に即して5年間を整備計画期間とするもので、今回は2023年度からの5年間になる。「脱炭素・資源循環の一体的推進」が柱となっている。 基本的理念は、「循環型社会の実現に向けた資源循環の強化」「災害時も含めた持続可能な適正処理」「脱炭素化の推進と地域循環共生圏の構築に向けた取組み」としている。脱炭素化と地域循環共生圏の構築ということでは、「廃棄物分野は熱回収やメタン発酵、資源循環の取組み等により温室効果ガス削減に貢献することが可能」「将来的にはCCUS(地中深くCO2を貯留すること)などの技術の導入により、脱炭素が期待できる」などポイントを挙げている。 委員からは、「施設の大規模化が難しい地方においては処理経費抑制のためには民間処理施設の活用といったことも検討に入ってくると思うので、自治体の統括的責任ということではそうしたことへの見極めも必要になってくると思う」とのコメントが聞かれた。 今回の2つの議案は今後パブコメを経て公布される 。
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令和5年2月14日開催 中央環境審議会第30回総会
環境省は2月14日、第30回中央環境審議会(中環審)総会を対面とWebの両方式で開催した。中環審の委員の任期は2年と定められており、30名の委員の改選が行われるとともに、会長に高村ゆかり氏(東京大学未来ビジョン研究センター教授)を選出したほか、各部会長が指名された。議事では「当面の諸課題について」質疑応答が行われた。議案審議の最後で和田事務次官は、今後環境省はどういう心構えで臨むかについて、考え方のコンセプトは狭い環境にとらわれず、未来像の提示とか希望ある社会像などを提示していきたいと述べた。
環境政策の価値が改めて認識されている
総会では会長の互選や部会長指名が行われ、新たな陣容で当面の諸課題を審議した。議事に先立ち西村環境大臣があいさつ。「環境省は我が国が直面する数々の社会課題に対して、カーボンニュートラル(CN)、サーキュラーエコノミー、ネイチャーポジティブ(自然を優先させる施策)等々、これらの同時達成を通じて持続可能な新たな成長を実現して、将来にわたって質の高い生活を確保していくことを目指している。皆様のご協力を賜りたい」。 次いで新たな委員の紹介が行われ、互選により会長に高村ゆかり氏が選出され、各部会長が指名された。高村氏は会長就任にあたり、「2年前にCNを軸に国内外の政策、企業、地域も動き出したが、昨年2から続いているロシアのウクライナ侵攻が国際平和や国際協力に影を投げかけている。そうした中でこそ、エネルギーの自給率を高め、資源の循環を促し、食料の自給を向上させていく、効果をもった環境政策の価値というものが改めて認識されるようになっていると思う」とあいさつを述べた。
動静脈協働による循環経済
環境省は当面の諸課題として「気候変動関連」「循環経済・福島復興関連」など4項目を示した。 気候変動対策では昨年12月のGX会議において脱炭素と産業競争力を同時に実現するロードマップが提示された。今後10年間で150兆円超の官民投資を行う。こうした中で環境省の取組みとしてはGX、脱炭素の取組みを推進するための支援措置として、地域脱炭素そして暮らしの分野、自動車、資源循環など支援していく。具体的には「脱炭素先行地域」を25年までに100カ所つくっていく。既に46カ所を選定しており、第3回の公募を行なっているところだ。 また「循環経済」では、「静脈のみならず動脈とも協働しながら資源の確保、安定供給を行い、その中でCN(カーボンニュートラル)にもしっかり取り組んでいくとともに、国外の廃棄物からの資源についても循環型を進めていこうと」(環境省)。
環境省の役割とは希望ある未来像の提示
委員からは様々な意見が出されたが、最後に環境省を代表して和田次官が今後の環境省の役割について、「私自身の思いも込めて」とことわりつつ次のように語った。 2050年CNが非常に強調されたあと、産業界はじめとして新聞にもCNが載らない日はないというぐらいになった。一方、GXというキーワードが出て、カーボンニュートラルだけという具合になりすぎて、サーキュラーエコノミーとかネイチャーポジティブの部分について環境省は少しパンチが効かなくなっているのかなというところは大いに反省すべきと思う。 環境省は法律に書かれている環境という分野にとらわれた環境だけでなく、考え方のコンセプトはSDGsをベースにした市民社会とか、一人ひとりの人たちがどんなことを未来に期待するのか、というところを念頭に置きながら政策展開すべきと思っている。未来像の提示、希望ある社会像とか提示していきたい。
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令和4年8月25日開催 中央環境審議会循環型社会部会 第43回
環境省の中環審循環型社会部会は8月25日、Web形式による会合を開催し、7月にパブリックコメント(意見募集)にかけた「第四次循環基本計画の第2回点検結果(循環経済工程表)」の結果を踏まえて審議した。委員からは「循環ビジネス促進は外資のためにやるように読める」「市民へのアプローチが少ない」などの意見が出され、こうした部分の修文・加筆などを酒井部会長に一任することで了承となった。事実上、「循環経済工程表」が出来上がったことになる。
2回に及ぶ意見募集、「工程表」への意気込み
7月1日~同30日までの1カ月間で行なわれた「工程表(案)」への意見募集結果は、6個人・団体から19件の意見が寄せられた。意見がやや少なかったのは2回目の意見募集だったからだろう。1回目は「事前意見募集」(パブリックコンサルテーション)という方式をとり本年1月18日~2月28日までの約6週間にわたり実施した。このときは個人・団体40人から68件の意見が寄せられた。さらに事前意見募集後の3月16日には、自治体や動脈系企業、経団連、市民団体などによる「ワークショップ」が開催されている。2回に及ぶ意見募集に加えてワークショップの開催。国の『循環経済工程表』への意気込みが感じられる。
循環経済構築は、外国投資家のため?
以前に述べたが、「工程表」の肝となる今後の方向性では、「環経済の方向性と2030年に向けた施策の方向性を循環経済工程表として取りまとめた」としており、①素材ごと、②製品ごと、③循環経済関連ビジネス促進の方向性等々、8つの分野ごとに、おおむね2030年頃までに必要な施策の方向性を記している。 今回の会合でひとりの委員から厳しい注文がつけられたのは、「循環経済関連ビジネス促進の方向性」についてだ。「(循環経済関連ビジネス構築)は、投資家から適切に評価される必要がある、としている。また、その直前にESG投資が呼び込まれる社会をつくると言っているし、その直後には国内外の投融資や拡大としており、その投資家とは暗に外国の投資家を想定したものであることがわかる」と述べ、「私たちは外国の投資家の利益を増やすために日本での循環経済構築を目指しているのではない」「本来であれば書かなくてもいいような外国資本を連想させるような書き方をする必要が果たしてあるのか」と修正を迫った。
CNの観点からはESGの期待は大きい
これについて別の委員からは「外国投資家に儲けさせるために循環経済に取り組んでいるのではないというのは全くその通りでこの辺は誤解のないようにしておく必要がある。ただカーボンニュートラル(CN)の観点からはESGの活用、期待というのは大きなものがあるので、それを循環経済の分野でも期待しているものだと思います」との意見が出された。環境省は「ESGを呼び込むというより、このところは資源循環の取組みをする企業というところなので、そうした企業が投資を受けた結果、国内で資源循環を促進するということです」と説明。 このほかの意見としては「工程表の進ちょくについて今後どのように確認していくのか」、また数名の委員からは「市民のアプローチの部分が少ないように思う」といった指摘があった。
修文・加筆を部会長に一任し完成
「工程表」の今後の確認について酒井部会長は、「工程表の『おわりに』のところに今後の方針を書き込んである」とし、必要な方策を政府として実施していくとともに、廃掃法に基づく基本方針などを示した。 そして意見が出された「循環経済関連ビジネス促進の方向性」と「市民へのアプローチ」の部分を修文・加筆することを酒井部会長に一任することで部会は了承し、「工程表」は事実上出来上がった。
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令和4年6月27日開催 中央環境審議会循環型社会部会 第42回
環境省の中環審循環型社会部会が6月27日Web形式で開催され、以前から審議してきた「第四次循環基本計画の第2回点検結果(循環経済工程表)」がまとめられた。循環経済工程表は資源循環に基づく脱炭素の取組みを推進していくための2050年を見据えた目指すべき方向性と2030年に向けた施策の方向性を示した。一部修文して早速パブリックコメントにかけられた。
「今後の方方向性」と「おわりに」の部分に注目
「工程表(案)」は前回も触れたが資料も含めて全体で108ページという大部なもの。構成としては、大きくは(1)循環型社会形成に向けた進捗状況、(2)循環型社会部会における点検結果、(3)計画全体の進捗点検、(4)おわりに、(5)参考資料といった5項目で組み立てられており、とくに(2)の中に記載されている「今後の方向性」がポイントになる。また、(4)の「おわりに」の部分はたった1ページの文章だが全体を統括した形になっており、工程表の位置づけもわかるような書きぶりになっている。注目すべき部分だ。
2050年見据えた循環経済分野ごとの施策の方向性
「今後の方向性」では、サーキュラーエコノミーへの移行を加速するため、2050 年を見据えて目指すべき循環経済の方向性と、2030 年に向けた施策の方向性を循環経済工程表として取りまとめたと述べており、「循環経済の役割と2050年を見据えた目指すべき方向性」としては、第四次循環基本計画の重点分野である「ライフサイクル全体での徹底的な資源循環」及びこれと密接に関連する分野の章立ても参考に、①素材、②製品。③循環経済関連ビジネス促進の方向性等々、8つの分野ごとに、おおむね2030年頃までに必要な施策の方向性を示したとし、それぞれの分野での方向性を記している。
ウクライナ問題が示唆、国内調達と循環の必要性
委員からは次のような意見が出された。 「日本の企業にとって海外に資源を依存しているということは、特に昨今のウクライナ情勢からわかるようにサプライチェーンのあり方、資源はできるだけ国内で調達しよう、循環していこうということが明らかになっていると思う。と同時に企業は循環経済の中でも特にプラスチックに関心が高い。で、循環経済の施策を進めていくときのプラスの便益、副次的効果についてもしっかり評価するということが大事だと思う。そういった観点からも指標が示せるのか検討してもらいたい」。また「サーキュラーエコノミーだと、雇用も含めて環境以外との政策との関係もある。そういうのをわかるようにしていくのは重要と思う。環境省も常にそういう意識を持って取り組んでいただけるとありがたい」との意見も。
循環経済の副次的便益を示す必要も
循環経済の副次的便益を示すということについては酒井座長も賛同し、環境省に対して「循環経済のプラスの便益、副次的効果を温暖化ガス削減と合わせて解析するのが重要な課題かと思う」と取組みを促した。環境省は「温暖化ガス削減以外の他の便益について今後、しっかりした分析が必要になってくると考えている」と述べた。部会は意見募集の結果を見てあと1回審議する。
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令和4年5月23日開催 中央環境審議会循環型社会部会 第41回
環境省の中環審循環型社会部会が5月23日Web形式で開催された。議題は「第四次循環基本計画の第2回点検結果(循環経済工程表・素案)」で、前回の部会で委員から出された意見をもとに工程表の文章を修正・加筆したものを事務局が提示し議論した。肉付けされた工程表は105ページにおよび、前回に比べ16ページも増えた。なかでも「今後の方向性」の部分が肝になるため事務局の説明もこの箇所にやや時間を費やした。プラについては自治体の回収量を2030年度までに倍増させるといった具体的な書きぶりも見られる。
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令和4年4月5日開催 中央環境審議会循環型社会部会 第40回
環境省の中環審循環型社会部会は4月5日、「第四次循環基本計画の第2回点検及び循環経済工程表の策定の素案(案)」についてWeb形式での会議を開催した。素案についての審議を行ったほか、今年1月~2月にかけて実施した循環経済を最大限利用した将来像についてのパブリックコンサルテーション(事前意見募集)で得られた意見の概要が紹介されたほか、参考資料としてプラ新法の市町村取組み予定アンケート結果なども示された。
目標達成は総じて横ばいか厳しい
部会ではまず、「第四次循環型社会形成推進基本計画の第2回点検」として資料に基づき、循環社会の全体像として代表指標の進ちょくの状況を説明した。「資源生産性」「入口側の循環利用率」「出口側の循環資源率」「最終処分量」のそれぞれについて、最新値である2019年度から見て、目標の2025年度までに達成可能かどうかを示した。それによると「資源生産性」と「最終処分量」は短期的にも長期的にも目標達成は可能の見込みだが、残る「入口および出口の循環利用率」の2つについて、目標達成はやや厳しいという状況だ。 同様に、「ライフサイクル全体の徹底的な資源循環」として、「プラスチック」「バイオマス(食品、木など)」「ベースメタルやレアメタルなどの金属」の目標達成進ちょく状況を示した。さらに「持続可能な社会づくりとの取組み」として、「循環型社会の市場規模」「家庭系食品ロス量」「事業系食品ロス量」「一般廃棄物のプラスチックの焼却量」等々の目標達成見込み状況を表した。 項目それぞれに目標達成の見込みはバラバラだが、ざっと見たところ、動向は総じて横ばいないしは達成が厳しいという印象だ。
情報の新しい伝え方、循環型だけが情報ではない
委員からも目標達成見込が横ばいないしはやや下向きと思えるとの指摘があり、これについては「今の体制ができて循環型社会構築に協力的になったが、それができなくなってきた。降りる人が出てきて横ばいになったのかなと。そうなると今の体制そのものでは向上は難しい。きっかけが必要」と述べ、さらに「地域循環共生圏などがあるが、共通の政策とか人々にどうやって情報をつたえるか、新しい伝え方というのを模索する必要があるのかなと思った」と語った。 この情報の広がりということについては、少し違った角度から意見を述べる委員もいた。 「いろんな方にとって価値ある情報というのは何も循環に関わる部分だけではなく、多様な意味を持っている情報だから価値が上がってつながっていく。結果的に循環にも寄与するというのが正しい展開だと思う。そうでなければ普及しない。循環ということだけでなく、広い目で見たときに価値ある情報をつないでいくんだという視点でうまくつないでいただけるといいと思う。どうすればそうなるのかを少し検討いただければと思った」
事前意見公募という試み
環境省は今年1月18日から2月28日までの間、「2050年持続可能な社会に向け、循環経済を最大限利用した将来像及びそのアプローチについて」の事前意見公募を行った。パブリックコンサルテーションと呼ばれるもので、従来こうした意見募集は部会などで検討テーマの取りまとめがなされ、それについての意見募集という形をとっており、事前に意見募集するのは画期的といえる。委員からも「特徴的な試みをやった」「多くのページを割いていることに敬意を表する」など評価する声が聞かれた。意見は個人・団体の計40名から総計68件が寄せられた。 質問は3点あるが、それについて寄せられた意見は、かなり幅広いことがわかる。これらの意見をどのようにして今後の施策に反映させるかということだろう。
まだ形が見えない「工程表」
「循環経済の工程表」についは今回、工程表らしきものは示されていない。今後の方向性として「循環経済の役割と2050年を見据えた目指すべき方向性」という項目を立てている。目指すべき方向性としては、「素材ごとの方向性」「製品ごとの方向性」「廃棄物処理システムの方向性」といた具合に8項目が並べられており、項目それごとに中身が箇条書きにずらっと書かれているだけだ。工程表のたたき台と言えようか。 「(カーボン削減の目標年度である)2030年と50年が混在しているなという内容になっていると感じられるので、文書化するには分類して区別した方がいいのではないか」と整理が必要との意見が委員から出された。
プラ新法、実施市町村は3~5年以内が多い
参考資料としてプラ新法についての資料が示されている。法律の概要や仕組みが写真やイラストを使って説明されているが、その中に「プラスチック分別回収等に関する市町村アンケート」が差し込まれている。市町村アンケートの第1回は昨年7月20日から8月10日にかけて実施されたが、追加アンケートとして10月18日から同22日にかけて実施したものを入れてある。全市区町村1747団体のうち1455団体から回答があった。 環境省は回答のあった1455団体のうち、182団体が既にプラ製容器包装と、プラ製品の分別回収・リサイクルに取り組んでいる又は取り組むことを検討していると記しているが、「未定」としている団体もすべて含めた数字なので、盛りすぎている感がしないこともない。 3年~5年以内の実施を計画している団体が多い。再商品化の方法は容リルートの活用を検討しているところが圧倒的に多い。 委員の一人からは「多くの自治体が参加を考えている状態ではない。こうしたものを今後どのように進めていくのか、何がネックになっているのかの要因分析が必要ではないのか」とやや手厳しい意見が出された。
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