全清連NEWS
全清連NEWS
publication

号外 令和元年(2019年)11月29日

令和元年台風19号災害で長野市・千曲市を支援
13日間の活動で車両239台、人員延べ424名を投入

(一社) 全国清掃事業連合会(三井弘樹会長)は環境省の要請に基づき、災害廃棄物処理支援ネットワーク「D.Waste‐Net」の初期対応メンバーとして、令和元年台風19号で甚大な被害を受けた長野市、千曲市の災害廃棄物処理支援活動に出動した。第1陣が10月26日から11月1日、第2陣が11月2日から同7日まで現地に入り、車両延べ293台、人員424名という規模で、市内に積み上げられた災害廃棄物5479?を市が指定した仮置き場まで運搬した。
10月6日、マリアナ諸島の東海上で発生した台風19号は、中心気圧955hPaという非常に強い勢力を保ったまま日本に接近し、同12日、伊豆半島に上陸した。これにより関東甲信越地方は猛烈な大雨に見舞われた。各地で3時間、6時間、12時間、24時間の降水量の観測史上1位を更新。とくに上越地点にほど近い神奈川県箱根町では、942.5ミリメートルという24時間降水量を記録した。
台風19号襲来の1カ月ほど前の9月9日には台風15号が三浦半島に上陸している。関東地方に上陸した台風としては過去最強の中心気圧955hPaで、猛烈な暴風と大雨をもたらし約6万戸という住宅被害、さらに2週間以上にわたる長期の停電を引き起こした。台風15号で緩んだ地盤に台風19号が追い打ちをかけた形になり、全国821カ所で土砂災害を引き起こし、全国71河川で128カ所の堤防が決壊するという壊滅的被害が発生した。90名以上の尊い人命が失われ、住宅被害は全壊・半壊が3万3000戸、床下浸水が3万7000戸に達した。
政府は事前準備を進めていた自衛隊に、災害地支援に関する行動命令を発出。環境省においても同15日にD.Waste‐Netの初期対応メンバーに支援要請を行った。

千曲川決壊で南北5キロが壊滅的被害

長野市の被害は千曲川堤防の決壊によるもので、浸水範囲は南北5㎞の1500ha、深さは最大4.3mに達したと言われている。多量の水が土砂とともに市街地に襲いかかり、建物の1階部分はほぼ水に沈んだ。
問題となっているのは被災者の片付けごみの行先だ。長野市では仮置き場を3カ所設けているが、いずれも被害が深刻な地域から車で30分から1時間ほど要する。往復するだけで相当な時間がかかる。そもそも車を失った被災者では自力搬入するすべがない。そのため近隣の公園や空き地などに片付けごみを排出せざるを得ず、こうした仮置き場が無数に発生し、いずれも容量が限界に達しようとしていた。
その形容は、敷地や道路に沿って高さ2mほど、手を付けただけで全体が崩れそうになるほど隙間なく積み上げられており、可燃・不燃、家電、廃材、さらにはガスボンベなど危険物などが入り乱れた混合廃棄物となっている。また畳などは腐敗が始まっており、周囲に悪臭をまき散らし、重大な公衆衛生上の支障となりつつあった。

狭路に行き場失った災害ごみあふれる

自衛隊も最大の仮置き場となっていた長野市・赤沼地区にある赤沼地区の支援に入ったが、日中はひっきりなしに被災者が搬入に来るため作業は夜間に行うしかない。作業効率が上がらず、2haある公園の敷地のほぼすべてがごみで埋め尽くされていた。
全清連の第1陣が到着したのはこの頃だ。支援開始の前日、10月25日に環境省同行のもと、長野市から支援要請を受けた豊野地区、赤沼地区、穂保地区、大町地区、さらに隣接する千曲市からも支援要請があり、それぞれの状況を確認。また自衛隊、ボランティアとも打ち合わせを行い、効率的な収集方法を確認した。
打ち合わせで自衛隊からは、赤沼公園で自衛隊が手を付けることができない廃家電が増加し、入り口を塞ぎ、災害ごみ搬出に支障が出ているとの声があり、ボランティアからは狭い路地にも多量の災害ごみが積み上がっている。早く撤去しないと、このままでは片付けができず作業がストップしてしまうという声があった。
そのため全清連としては、市内に積み上げられた災害ごみを、赤沼公園に積み上がった廃家電も含めて、長野市が指定した2つの仮置き場に搬入、それと並行して隣接する千曲市でも複数ある仮置き場の混合廃棄物を集約化する作業を支援することとなった。

10月26日に出発式

26日午後1時、長野市の資源再生センターで第1陣の出発式が行われた。
環境省から応援に駆け付けた庄司真憲課長は「長野市は見ての通り大変な被害を受けている。支援は心強く、本当に感謝している」と感謝を述べた。長野市の宮尾正彦環境部長は「皆さまには大変な作業をお願いすることになるが、復興のためにお力をどうぞ賜りたい」と求めた。
その後、三井弘樹会長の号令により、集まった隊員たちはこれから1週間におよぶ活動にとりかかった。
第1陣に参加したのは、愛知県、三重県、岐阜県、京都府、新潟県、静岡県、広島県、鳥取県の1府7県の組合。延べ車両ダンプなど133台。ユンボなど重機41台。人員250名を投入。
第2陣に参加したのは、大阪府、高松市、山口県、鳥取県、広島県の1府1市3県。延べ車両ダンプなど98台。ユンボなど重機45台。人員208名を投入。
1陣2陣合わせて市内に積み上げられた災害廃棄物5479立方メートルを、市の指定仮置き場まで運搬した。

災害支援活動が被災者の希望に

全清連の支援活動は11月8日までの2週間におよび、同日、長野市資源再生センターで解団式が行われた。
三井弘樹会長は「皆さまには必死に、一生懸命作業していただいた。住民の方々からの感謝の言葉をあちこちからいただいていると聞いている。私は本当に参加してよかったと思っているが、皆様にも我々の活動は間違いではなかったと感じてほしい。いち早い復旧・復興を願い、解団式のあいさつとさせていただく」と労をねぎらった。
また駆けつけた加藤久雄長野市長は「皆様におかれては、10月26日から第1陣、第2陣と大きなお力により、町が少しずつきれいになってきた。本当に最初の状況とは段違いに変わってきた。皆様の恩は決して忘れない。地元に帰られてもお体に気を付けてご活躍いただきたい」と感謝を述べた。
元長野県副知事で、環境省環境計画課の中島恵理計画官は「非常に大変な作業であったと思う。私も赤沼地区などを見て、皆様にどんどん仮置き場まで運んでいただき、早いスピードで片付いていった状況を目の当たりにさせていただいた。全清連のように被災地を支援する仕組みがあることは本当に素晴らしく、全国の皆様が相互に被災地を応援できるよう、引き続きご協力いただければ、環境省としてもできる限りのことを行ってまいる」「また機会があれば長野市はいいところなので、訪問いただければ」と呼びかけた。
加藤市長が感謝状を三井会長に手渡し、2週間にわたる支援活動を終了した。

第1陣、第2陣から活動報告書

第1陣および第2陣から活動報告書が作成されている。第1陣は長野支援隊第1陣・和田孝一調整事務局長(岐阜県清掃事業協同組合・事務局長)と片野宜之隊長(三重県清掃事業連合会会長)。第2陣は長野支援隊第2陣・松浪俊博副隊長(広島県清掃事業連合会専務理事)のそれぞれから、今回の支援作業を通じて苦労したことや気づいたこと、工夫した点や思ったこと、問題点や反省点、うれしかったことなど様々な事柄がドキュメンタリーで活写されている。

(詳細については全清連ニュース号外をご覧ください)