令和2年5月22日 働き方改革に沿った形で労基法規定の是正など要望
議員連盟と要望懇談会開催
「廃棄物処理法に係る制度見直しについて」
一般社団法人全国清掃事業連合会(全清連・三井弘樹会長)は5月22日、衆議院第二議員会館において地域廃棄物適正処理推進議員連盟(会長・石破茂衆議院議員)と要望懇談会を開催した。議連からは石破茂会長、野田聖子副会長、竹本直一副会長、斉藤鉄夫幹事長、寺田稔事務局長をはじめ多数の先生方のほか、環境省、厚生労働省からも幹部が出席。全清連から提出された4つの要望事項について意見交換を行った。なかでも年少者のごみ収集作業を不可とする昭和22年に制定された労働基準法(労基法)の規定は、働き方改革を推進する上で問題があるとして是正を求めた。これについて厚労省の石垣健彦監督課長は「環境省、全清連の皆様から実情やご意見をうかがいながら、どういう見直しをするのが適切なのか検討したい」と見直しに前向きな意向を示した。
議連・石破会長あいさつ。「立法府の一員として何をすべきかを認識」
懇談会は寺田稔事務局長の司会で進められた。冒頭、議連を代表して石破茂会長が次のように3つのポイントを織り交ぜながらあいさつを述べた。「廃棄物といっても、一般廃棄物、産業廃棄物、事業系一般廃棄物と、見た目は一緒だが適用する条文が違っていて、そのことを明確にしていかないと仕事がスムーズに進まない、というのが第一点。もう一点は新しい法律がどういう形になっていくのか、それについてどのような考え方をしているのか、ということをよく確認しておきたいということ。そしてもう一点は、18歳未満の方々、年少の方々が、明治33年にできた法律に基づいて大切な仕事を働けない。いわゆる3Kというか何というか、そういうのはきちんと是正しておかないと今後のためにならないと考えております。こういうことについて本日は議論し、それぞれの考え方を統一したいと思っております。我々立法府の一員として何をしていかなければならないかを認識し、今後の糧にしたいと思っております」。
次いで全清連・三井弘樹会長よりあいさつ。「本日は令和になってはじめての議連懇談会になりました。大変お忙しいなか、40名の先生方にご出席いただくことになっておりますこと、まずもって御礼申し上げます。また、環境省、さらに今回は厚生労働省の方にもご出席いただいております。後ほど昨今の懸案事項につきまして、当連合会よりご要望説明をさせて頂きますので、活発なご意見、ご指導をいただければと思います」。
引き続き、全清連・山田専務理事、国岡稔副会長より要望事項が説明された。
時代錯誤の「年少者労働基準規則」。厚労省も見直しに前向きな意向
要望事項としては次の4点を提出した。
①全国産業資源循環連合会が求める現行の廃棄物の区分の変更に関する事項。
②全国産業資源循環連合会が求める「産業廃棄物処理産業に関する法律案(仮称)大綱」に関する事項。
③働き方改革の推進ならびに人材確保難克服の障害となることが危惧される労働基準法第6章第62条の規定及び第62条の業務の範囲を定める「年少者労働基準規則第42号の規定ならびに解釈見解に関する事項。
④プラスチック容器包装リサイクル入札制度の改善について。
司会の寺田稔事務局長が「①~③を一括して審議したい。環境省ならびに厚労省の見解をお伺いしたい」と促した。
環境省大臣官房の松澤裕審議官は、①について「廃棄物処理法の理念を踏まえて処理責任は誰にあるかということで区分されている。これは変らない。排出者の処理責任と市町村の統括的処理責任という、区分に応じて処理責任の主体を明確にしている。全体として廃棄物の適正処理がされることが重要で、この考えに変わりはない」と述べた。また②については、「特定の業界だけでなく、業界全体がどのように成長していくかという点が大事と思っている」と環境省の考え方を披露。③に関しては「厚労省と協力して、環境省としても尽力していきたい」とした。
とくに③の「年少者労働基準規則」については、山田専務が労基法の説明の中で「年少者の就業制限(18歳未満の者を就かせてはいけない業務)の第42番目にある「焼却、清掃、又はと殺の業務」についての旧労働省の見解は、「焼却の業務」とは、塵芥焼却、死体火葬等の業務をいい、「清掃の業務」とは、ふん尿くみ取り、塵芥収集などいわゆる汚物処理の業務に限られるものである」としている。地域の生活環境保全、公衆衛生の向上を目的とする公共サービスのごみ収集作業が、いまだに危険有害業務、福祉上有害な業務とされている。このような業務があるとしたら、そこで働きたいと思う人はいない。働き方改革以前に、私どもの仕事が社会的差別を受けてしまっているといっても過言ではない」と、時代錯誤の規定がいまだに生きていている現実を指摘した。実は、全清連がこの要望を提出したのは、某市が処理業者に対して、この年少者労働基準規則を持ち出し、18歳以下の年少者はアルバイトでも使ったらダメだと言いはじめたことによる。
これについて厚労省の石垣健彦監督課長は「昭和22年の通達で解釈を示していますが、昭和63年のときに全体の関係通達を見直した時にもこのような形で残ってしまった。これまでご要望をいただいてこなかったということもありまして、不勉強で恐縮ですが(一般廃棄物処理は)これまでの歴史の中で業務上の安全性や位置づけがかなり変わってきていると考えています。環境省、全清連の皆様から実情をお伺いして、その中でどういう見直しをするのが適切なのか、ご意見を伺いながら検討していきたい」と見直しに前向きな意向を示した。
これを受けて寺田稔事務局長が「早急に実務者会議をスタートさせていただきたい」と環境省、厚労省に注文を出すとともに、議連としても諸課題について引き続き関心を持って対応していくとした。