令和4年7月28日開催 全清連研修会in京都
全国清掃事業連合会(三井弘樹会長)は7月28日、京都市内のホテルで「八代裁判について考える」第2回研修会を開催した。八代裁判に関してはかねてより全清連が支援活動を展開しており、平成元年6月10日にはそれについての研修会を開いた。今回は第2回目となるわけだが同事件はいまだ係争中ということもあり、簡単な経過報告にとどめた。研修会では講師の阿部弁護士が「一般廃棄物処理を巡る裁判の現状」と題していくつかの事件について講演し、また湯川弁護士は自身が原告代理人弁護士として担当した小浜事件最高裁判決(1.28判決)とそれに続く環境省10.8通知の意義についてポイントを整理してわかりやすく解説した。なお、研修会は新型コロナウイルス感染防止対策上、会員の参加数を制限して行われた。
法律論と業務の内容の両立が大事
研修会は冒頭、全清連を代表して三井会長が次のようにあいさつを述べた。 今回の研修会の目的について会長は「ひとつには環境省の6.19通知、10.8通知、それと1.28最高裁判決を改めて深く理解していくこと。もうひとつは八代裁判のこれから。結果はどうあれ、地元の皆さんが市町村とどう協議していくのかということも含めての研修会であると理解していただきたい」と述べ、しかしながらこうした通知や判決の効力は絶対的なものではなく、これにプラスして自分たちの業務の内容が大事だと説く。「日々の業務がどうであるか、私たちの仕事内容は行政からどう見られているか業務の品質が第1点、もう1点はこの業者にしか任せられませんよねと言っていただけるように、いろんな意味での付加価値をつけていって、それを行政に提案し、チャレンジしていくという行動の積み重ねを今からしていくということが大事だと私は思っています。法律論と業務の内容とが相まって、この両立あってこそ私たちの地位は守られると理解していただければ思います」。
最高裁判決平成26年1月28日(小浜事件)の意義
講演では、「一般廃棄物処理を巡る裁判の現状」と題して講師の阿部泰隆弁護士がいくつかの事件について述べた。その中には「し尿」処理に関する事件もあり、また法律用語も頻繁に出てくる。ここに記すとかなりのボリュームになるので割愛するが、ただひとつ阿部弁護士が裁判というものについて「よい裁判官に当たるかどうかによる」という指摘が裁判という仕組みの全体を物語っているといえようか。 今回は湯川二朗弁護士の講演「最高裁判決平成26年1月28日(小浜事件)の意義」の概略を取り上げることにする。 小浜事件の最高裁判決の要旨はこうだ。市町村長から一定の区域につき既に一般廃棄物収集運搬業又は一般廃棄物処分業の許可又はその更新を受けている者は、当該区域を対象として他の者に対してされた一般廃棄物収集運搬業又は一般廃棄物処分業の許可処分又は更新処分について、その取り消し訴訟の原告適格を有する。 湯川弁護士は「直接的には、既存業者には新規許可の取り消しを求める法律上の利益があることを明示したものであるが、その結論を導くにあたって、(最高裁判決で示された中でも)以下の①~③が大切といえる」と述べた。
① 許可における審査の考慮事項を明らかにした。
② 法は、市町村長は既存業者の営業上の利益を保護すべき義務を負うことを明示した。
③ 市町村は既存許可業者の営業上の利益に配慮しこれを保護すべき義務を負い、違法に 新規許可をしたときはこれにより既存業者が受けた損害を賠償すべき場合があることを 認めた。
「原告適格」とは土俵にあげてやるということ
これは既存業者さんが新規の許可の取り消しを求める「原告適格」があるという。この「法律上の利益」と書いてありますが、そういうことを(判決では)言いました。 直接的には既存業者には新規許可の取り消しを求める「法律上の利益」があることを明示したものであるということです。これは法律用語が入っているのでなかなか分かりにくいところがあると思います。何が分かりにくいかというと、「法律上の利益」あるいは「原告適格」というのはですね、つまりこれは「土俵に上げてやる」というだけの話しなんですね。で、土俵に上がってこちらの勝かというと、とんでもない行司がいるというのが裁判の世界なんですね。
既存業者を大切にしろは画期的
①が皆さん重要と思われているところですね。「許可における審査の考慮事項を明らかにした」という書き方をしています。わかりにくい言葉ですけど、つまり「一般廃棄物処理業務の適正運営が継続的かつ安定的確保」が一番大事ですよと。それにあたって「需給の均衡がとれていること」と「需給の変動があるときは」、つまり新規参入があれば需給の変動があるにきまっていますから、「変動による既存業者の事業への影響について適正に配慮しているか」これが重要だと言っています。既存業者の事業への影響を配慮しろ、これを考えろと言ってくれた、これは非常に画期的です。ただこれ、どこまでのことをしないといけないのか。配慮しろとは言っていますけど、何をしたら配慮したことになり、何をしなかったら配慮しなかったことになるのか。配慮しなかったとしてもだからどうなんだ、というところは実は最高裁判決は言ってくれていません。
自治体は既存業者の営業上の利益を保護する義務を負う
②ではそれは市町村の義務であるという形で裁判所は言いました。法は「市町村長は既存業者の営業上の利益を保護する義務を負うんだ」と。だから既存業者は潰れてもいいということは絶対行政としては言えないことで保護義務があるんだと。その地域の衛生や環境を保護する上で既存業者さんの営業上の利益というのは非常に大切なことなんですよということを真正面から認めています。だからそれをちゃんと適切に考慮しなさいとい、こういう話になるんですね。
次の③です。②で市町村は既存業者の営業上の利益を保護する義務がありますから、それに違反したらそれによって「既存業者が受けた損害を賠償すべき場合がある」ということを言いました。ここまでが非常に画期的なところです。