第98号 令和3年(2021年)1月31日
新年のご挨拶
一般社団法人全国清掃事業連合会会長 三井弘樹
~コロナ禍を乗り越え、ローカルSDGsの一層の推進を~
令和3年の念頭にあたり、謹んでご挨拶を申し上げます。
振り返れば令和2年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックという未知の危機への対応に明け暮れた一年でした。
私どもはこれまでも震災や豪雨、台風等様々な災害に立ち向かってまいりましたが、今回の危機は、私どもの業界のあるべき姿や使命について、改めて考える機会となりました。
平時においても、非常災害時においても、業務を確実に履行し、地域環境保全と公衆衛生向上に寄与することは私ども清掃事業者の本質的使命です。
昭和から平成前半の時代、私どもの先人たちは、ただ一途に使命を果たし、国民の生活基盤を黙々と支えてきました。
その努力の積み重ねを地域廃棄物適正処理推進議員連盟や環境省等省庁の皆様にご理解いただいたことで、平成20年6.19通知や同26年10.8部長通知が発出され、私どもの事業の位置づけが法的にも明らかにされたのだと思います。
そして令和も3年目を迎える今、清掃事業はどうあるべきでしょうか。
それは市町村との強い信頼関係の中、市民から必要とされ感謝される業務品質が実現できているか、さらに現状に満足せず新しい公共サービスを提案できるかどうかを常に顧みることだと考えます。
全清連として、いち早くSDGsへの取組みをはじめたこともこれと関係があります。私どもの事業はまさしく「持続可能な社会」への貢献です。SDGsもまた、地球人類全体を持続可能なものとして次の世代に手渡していくために、今すぐ取り組まなければならない17の大きな目標を掲げています。
私どもにとっても、プラスチック資源循環、高齢者や障がい者のごみ出し支援、CO2削減に配慮した車両の導入による地球温暖化対策等、取り組むべき課題はたくさんあります。
現状維持ではなく、新しくできることは何かを全員で考え、市町村や取引先にも積極的な提案をし、実績を積み上げていく。
そして市民から真に必要とされる存在となり、次世代へバトンをつなげていくためにも、令和3年はそれを行動に移す1年とする所存です。
――以上、要約――
地域廃棄物適正処理推進議員連盟会長・衆議院議員 石破茂
~持続可能な社会づくりへ、全清連のSDGsチャレンジに期待~
年頭所感
◎環境省環境再生・資源循環局局長 森山誠二「平時・災害時において多様化する廃棄物処理に係る課題に一層の取組みを」
◎ 農林水産省食料産業局バイオマス循環資源課課長 清水浩太郎「一層の発生抑制へ食品ロス削減推進法の各種施策を推進」
◎ 経済産業省産業技術環境局資源循環経済課課長 横手広樹「経済社会システムの変化を踏まえた資源循環の着実な推進」
コロナ対策奮闘記~COVID-19感染防止対策の現場から~
『コロナ禍で再認識したエッセンシャルカンパニーとしての矜持(前編)』
富士宮清掃(有)代表取締役 穂坂勝彦
挑戦の年に襲った新型コロナ
「今年はチャレンジの年となります。10年後、20年後を見据えて、今やるべきことや変革していくこと、とくにこれから会社を担っていく若手社員の成長を支援していきましょう。今まで通りは楽ですし安心ですが、会社の未来のために新しいことに次々と取り組んでいきます。是非、皆さんの力を貸してください」――昨年1月、意気揚々とした気持ちで年頭の所信表明を行った。弊社は1956年より富士宮市から家庭系一般廃棄物収集運搬の委託業者として60年以上、この町の生活環境の保全及び公衆衛生の向上に貢献してきた。
2017年に代表取締役に就任して3年が経過し、先代との引き継ぎも進み組織体制も安定している。勤続年数の長いベテランも多く、若手社員の人材確保もできた。今年は若手社員の成長を促すために現場でのシフト改変や育成プログラムを組み、今後中心となる幹部候補生の中堅社員を育成するための研修やプロジェクトを立ち上げ、ベテラン社員が担っている責任や権限を少しずつ移譲しながらベテランの負担を減らしつつ若手や後進の育成に協力してもらい、定年まで安心して働ける環境の整備を進めていた。
――略――
しかし、この時点で中国武漢市に端を発した新型コロナウイルスの蔓延が、日本をそして世界中を蝕み始めていた。
2月に入ると東京品川の屋形船での感染拡大、そしてダイヤモンドプリンセス号船内での新型コロナウイルスの蔓延が連日報道をにぎわせるようになってきた。この時点では、大変なことが起こり心配な気持ちでありながら、どこか他人事で静岡県とは無縁の話、まさに”対岸の火事”であった。
広がる不安と迫られる危機対応
しかし、日を追うごとに新型コロナは広まり日本社会の不安は膨らみ続けていった。マスクや消毒用アルコールが市場から姿を消しはじめ、全国すべての小中高校が一斉休校となる見通しとなると、子育て世代の社員を中心に不安が広がりはじめる。社内でも使い捨てマスクの残量を確認し、いつ在庫切れになるかの計算や、必要備品の確保やメディアやネット、全清連からのメールを元に情報収集を行っていった。
とくに広島清連様からの情報提供は大変参考になり、弊社でも今後起こりうる状況を段階的に設置し、第一段階(県内感染者なし)、第二段階(県内感染者あり)、第三段階(市内感染者あり)とし、まず第一段階から対策を取り始めた。
(本文1/2程度掲載。以下略)
『新型コロナ禍の1年を振り返って思うこと(前編)』
㈱三次衛生工業社代表取締役 松浪俊博
弊社は広島県の北部、三次市という人口約5万人の小さな町で、家庭ごみ収集、産廃処理、し尿・浄化槽収集を主として業務を営んでいます。三次市は中国地方のちょうど真ん中に位置し、広島県と言っても、天気予報は島根県側を確認するような典型的な中山間地域です。昨年来、世界中を揺るがしている新型コロナウイルス(以下、コロナ)において、中山間地域の小さな田舎町で、地域密着型の小さな会社が、コロナ対応をキッカケに、何が起き、思い、考え、動いたかを報告させていただきたいと思います。
一変した日常
令和2年1月、中国の武漢市にて新型のコロナウイルスが発見され、市民に感染が拡大・蔓延しているという報道がありました。この時点では記事も決して大きなものではなく、日本に住む私たちも、遠い外国で何か大変そうだという印象しか抱いていませんでした。(――中略――)情報提供する報道側も、情報を受け入れる私たちもどこか他人事の印象を抱いていたことは否定できません。
令和2年2月、横浜港へ寄港したクルーズ船の乗客内でコロナ感染者が発生したときも、クルーズ船内という隔離可能な閉鎖集団という都合の良い認識があり、心のどこかでテレビの向こう側の出来事といった雰囲気で、危機感がなかったのではないかと、今、振り返れば思います。
しかし東京を主とした人口の多い大都市圏を中心に感染者が広がり始め(今思えばかなり少ない数です)、いよいよ日本国民全体で、他人事が身近な自分事に捉え始めました。政府が全国の小中高等学校の臨時休校を要請、三密という言葉で警鐘、オリンピック延期決定、有名芸人の死亡などが毎日のように報道され、否が応でも緊張感と恐怖が高まりました。
誰もが未経験で、見えないもの、高齢者や疾患のある人には命の危険性もあることへの対応ですから、政府も報道も情報が錯そう・混迷していた印象です。誰もが不安や恐怖を覚え、そこにインターネットやSNSのネガティブな情報拡散効果もあってか、トイレットペーパーが無くなるとか、食料品が手に入らなくなるかもしれないといった噂が広がり、混乱防止のために大手食料品企業が在庫は充分あることをわざわざ報道したり、対策の基本物品ともいえる消毒用アルコールに至っては、実際に日常消費量を大幅に上回るわけですから、瞬く間に供給が追い付かず在庫切れを起こし、手に入らない状態に陥りました。マスクも店頭では在庫切れを起こし、ネットにて高値で取引されている状況となりました。
一部地域における地震や豪雨等の災害と異なり、日本全体を対象とした出来事であるため、「誰かが誰かに協力する、与える」「冷静な者が混乱した者を助ける」といった図式ではなく、総理大臣から国民一人一人まで、一億総国民全員が「見えない、未経験の恐怖」に対し、パニックに陥った状態だったという印象です。
矢継ぎ早に迫られる対応
弊社の対応としては、まず、1月初期段階で国から「平成30年策定の感染性廃棄物処理マニュアル」、そして「平成21年策定の新型インフルエンザ対策ガイドライン」の適用がひとまず有効な手段であるとした通知があり、その通知の中で「コロナ禍においても国民生活維持に不可欠なサービスとして廃棄物処理の継続要請」が強調されていました。
これについては、以降、頻繁に発出されることになる国からの通知文書で何度も何度も強調されることになりますが、私個人としては、全清連の会員として、また、全清連という一般廃棄物処理事業者団体の理念・方針として、長年、一般廃棄物処理事業者のあるべき姿(法的位置づけ、社会的役割、公共性)を学ばせていただいたこともあり、ライフラインを担う業種として、また、過去の地元や他地域での災害対応経験もあったことから、いかなる場合においても継続の必要性、その通知の言わんとするところをしっかりと理解することができました。理解できたというよりむしろ日常からそのような意識があったので、大きな気持ちの切り替えは不要でした。(――中略――)
では、「継続する」とは具体的にどういうことかとなると、廃棄物処理、とくに収集運搬は労働集約型の人的サービスです。つまり従事する社員を守ることが市民サービスを守る大前提になります。
(本文1/2程度掲載。以下略)
●推薦図書 読書のおすすめ
『SDGs(持続可能な開発目標)』蟹江憲史 著/中公新書:定価920円(税別)
――ポストコロナの道しるべ――
第一人者が理念から行動までを解説
(詳細については全清連ニュース第98号をご覧ください)