第110号 令和6年(2024年)1月31日
新年のご挨拶
■一般社団法人全国清掃事業連合会会長 三井弘樹
〜原点回帰と進化の年に〜
年頭にあたり、謹んでご挨拶を申し上げます。
また、元日に発生した能登半島地震で犠牲となられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災者の方々が一日も早く元の生活を取り戻せるようにと願いながら、全清連は1月22日より輪島市等被災地での災害廃棄物収集運搬の支援活動を開始し、私も微力ながら現地で参加させていただきました。被害は想像以上に甚大で、現地の方々の苦難は察するに余りありますが、今後も私たちにできること、すべきことを考え、実行していく所存です。
さて、甲辰(きのえ・たつ)の令和6年は、干支の始まりであり、植物が芽吹く前の忍耐が必要な時という意味を持つ「甲」と、「振るう」という意味にも通じ、草木が活力旺盛となった様を表す「辰」が重なる年であり、忍耐と活力という矛盾を抱えた年とする見方もあるようです。
しかし私はこの一年を、変化すべきことには柔軟に対応しつつ、変えてはならないものは守り抜く、環境の保全と事業の発展の両立を、地道な努力と大胆な挑戦で実現する一年とする決意でおります。
今変えるべきことは何でしょうか? 急がれることがカーボンニュートラル社会への変換です。昨年夏の世界的な高温を国連事務総長は「地球沸騰化」と表現しました。屋外でごみ収集等の作業を行う私たちにも猛暑は危険をもたらします。これを制止するには気候変動の原因であるCO2の排出抑制のための地域カーボンニュートラルが急務です。
私たちの業界も車両や施設の省エネ化等を通じてこれに取り組んでいますが、廃棄物分野が排出するCO2の76%は廃棄物焼却の過程で発生していますから、使用済みプラスチック等廃棄物のリサイクル拡大でCO2発生抑制も前進すると考えられます。プラスチック資源循環促進法施行から二年となる今年は、各地で市町村と協議を深め法の理念の理解促進を図り、地域カーボンニュートラルを進めたいと思います。
一方、変えてはならないものは何でしょうか? その一つが持続可能な社会であり、そのための環境保全優先の原則だと考えます。清潔で衛生的な環境で誰もが安心して生活できる今の日本は、社会が発展しても、停滞したとしても、失ってはならない、変えてはならないものです。
全清連も一廃適正処理を通じて地域環境保全と公衆衛生確保向上を支えて参りました。新型コロナの中でも国や自治体、議員の皆様のご指導ご支援もあり、その事業を継続することができました。公衆衛生に直結する廃棄物適正処理は、事業者と国や自治体との一体的な連携の下で安定的に行なわなければならないという原則が、緊急事態においても機能したからだと私は確信しています。
令和6年は久々の行動制限が解除された新年となりますが、非常事態の中でその意義が明確となったこの適正処理の原点は、今後も変えるべきではないと考えます。
能登半島での地震ではじまった甲辰の令和6年は、国内、国外とも激動が予想される一年になると予想されます。私たちは大きな変化に勇敢に挑むとともに、困難の中でも変えてはならないものを守り抜くため、成長し、進化し、課題を一つ一つ解決する一年とする所存です。今年もよろしくお願いします。
■地域廃棄物適正処理推進議員連盟会長・衆議院議員 石破茂
〜中小企業の成長と環境配慮型社会が持続性のカギ〜
新年あけましておめでとうございます。皆様、そしてご家族ご一同様の、本年のご多幸をお祈りいたします。
昨年は、約三年にわたった新型コロナウイルス感染症がようやく収束し、我が国の世界各国からのインバウンドが回復するなど、コロナ禍前の日常が戻った一方で、ロシアとウクライナの紛争は長期化し、さらに昨年十月にはパレスチナ自治区ガザ周辺におけるハマスの攻撃が勃発し、イスラエルの容赦ない反撃が続いています。
また、本年は元旦から能登半島地震に見舞われました。頻発し大規模化する自然災害に可及的速やかに対処し、被災された方々のQOL(生活の質)を抜本的に向上させるためにも、災害関連の総合専門省庁が絶対に必要だと思っております。この点、皆様の一般廃棄物処理にかかる経験と知見もさらに生かしていただけるよう、体制作りをさらに訴えてまいりたいと存じます。
山海の絶景や美しい四季の移ろい、ユニークな中小企業の技術や職人技など、地方のコンテンツこそが停滞する我が国経済の起爆剤です。インバウンド需要にとどまらず、日本とその製品のリピーターを増やし、持続的なものとする取組みに本年こそもう一度正面から取り組みたいと思っております。
GDPと雇用の過半以上を占める中小企業が、環境の変化を生産性と収益の向上につなげ、持続可能な賃上げに舵を切れるかどうかが全体的な成長のカギであり、また環境配慮型社会こそが持続可能な経済を生み出すことをより明確にしなければなりません。皆様の更なるご教導をお願いする所存です。
皆様の地域に根差した活動を礎として、わが国の再興を地方から達成していくため、本年も引き続きご厚誼のほど、よろしくお願いいたします。
新春対談
災害の頻発、人口減、循環型社会の実現
山積する課題に向けた役割は
・地域廃棄物適正処理推進議員連盟幹事長 斉藤鉄夫 衆議院議員
・一般社団法人 全国清掃事業連合会 三井弘樹 会長
令和6年新春にあたり、全清連の三井弘樹会長は、地域廃棄物適正処理推進議員連盟幹事長の斉藤鉄夫衆議院議員(現・国土交通大臣)と1月28日に対談を行った。令和6年1月1日に発生した能登半島地震の支援活動について報告を行いつつ、一般廃棄物処理業を取り巻く課題、カーボンニュートラル、循環型社会の構築、地域の持続性確保に向けた取組みについて意見交換した。(以下、対談のサマリー)
▽前例のない災害・事故ではじまった令和6年
――新年を迎え一言お願いします。
斉藤 新たな抱負を持って新年を迎えたのですけれども、元旦から能登半島地震が発生し、さらに羽田空港での事故と、過去に例のないほどの大変な年明けとなりました。通常国会が1月26日から始まりましたので、体勢を立て直し国土交通大臣として全力で責務を果たしたいと思います。いまはとにかく被災地の道路と水道の復旧に全力を挙げています。
また今後の課題として、建物の耐震化という問題もあると感じました。いま、全国の平均耐震化率は74%ですけれども、能登地方は低く約50%です。今回の震災では古い家屋が相当数倒壊してしまいました。
▽輪島市、穴水町での災害支援活動を報告
三井 斉藤先生がおっしゃったように、本当に大変な正月となったと思います。
私も本日、金沢から帰ってきたところでして、一昨日の夜遅くに現地入りし、状況確認と直接支援に参加してまいりました。
全清連の動きといたしましては、環境省の災害廃棄物対策室から現地における調査と打ち合わせが来たのが1月5日でした。これを受けまして全清連の災害対応委員会の片野委員長以下4名のメンバーが1月11日〜12日の2日間、石川県庁での打ち合わせの上で輪島市、穴水町における状況確認を行い再び県庁に戻って、環境省、石川県担当部局とどのような支援が必要か検討しました。
そして、実際の支援活動は、1月22日から1カ月間の予定で行なっております。現地には宿泊施設もなく拠点となる場所がありませんので、金沢市のビジネスホテルを押さえ、片道5時間ほどかけて輪島市の避難所ごみの収集、輪島穴水クリーンセンターおよび穴水町の仮置場の生活系ごみを金沢市の焼却場へ転送するなどの活動を行なっています。
全清連部隊の陣容としては、岐阜県清掃事業協同組合から4トンパッカー車2台の提供を受け、運転作業要員は広島、三重、大阪、愛知の各府県連から1週間交代で派遣していただき、また特別会員の㈱富山環境整備からも4トンパッカー車1台と運転作業要員を派遣していただいております。
今回の震災が今までの災害と異なるのが道路事情の悪さです。能登半島を横断する「のと里山海道」が、崩落によって穴水町の手前の横田インターチェンジで通行止めになってしまいました。そこから先の一般道も路面が崩落したカ所が多く、頻繁に片側交互通行を挟みます。う回路はなく、途中から富山方面からの車両と合流して大渋滞を起こしていました。
水道はまだ復旧していませんし、輪島の朝市、私も現場で献花してまいりましたけれども焼け野原です。さらにほとんどの家が応急危険度判定で「危険」を意味する赤紙が貼られています。これでどうやって復興するのだろうと本当に身につまされる思いがしました。大きな町なのに人の姿も見えません。どこかの避難所に皆さん移動されて、手も付けられていないのだろうと思います。
過去の災害で発災直後から多く見られたタンスや食器等の片付けごみの排出も進んでいませんので、この排出が増えてきた際には支援の第2陣を組むかどうか、これもまた環境省と協議していかなくてはならないと思います。昨日は県庁にもあいさつに伺いましたので、環境省の方ともそういう話をしてまいりました。
斉藤 ありがとうございます。全清連の皆様方には東日本大震災や熊本地震、西日本豪雨、令和元年台風第19号災害等いつも大変なご協力をいただきました。
能登半島地震では政府も非常災害対策本部でほぼ毎日、岸田総理を中心に対策にあたってきました。環境省からも伊藤信太郎大臣が毎回出席して、し尿処理に対応しています。
その次は三井会長がおっしゃるように、災害廃棄物がこれからの課題となると思います。私どももインフラの復旧と併せて次のステップへ準備を進めてまいりたいと思います。
三井 皆さま避難所で過ごされて一カ月、それがまだまだ続くわけですから想像を絶するご苦労をされています。私たちもその場の状況に応じて、できることをやってまいります。
▽眼前の課題を見据え、原点回帰と進化の年に
――今後の活動について、課題をお願いします。
斉藤 日本の社会、経済という大きな方向性で言えば、やはり岸田内閣をしっかり支え、新しい資本主義の実現に向けて踏み出さなくてはならないと考えています。国土交通省の仕事としては、これからの社会インフラの整備・維持をしっかり進めていくということで、その過程で出来るだけ廃棄物を少なくする。そして循環型社会の形成に資する建築物、インフラをつくっていくことも非常に重要な課題です。
三井 私どもは進化していく必要があると考えています。まずは原点に返らなければなりません。廃棄物処理とは何か。私たちの業務品質とは何が求められているのか。こうした原点に立ち返ったうえでの進化です。現状維持では衰退しかありません。
いろいろな業界で言われている人手不足の問題を取り上げても、まずはきちんとした労働条件、賃金というものが必要です。外国人技能実習制度の業種認定を受けるべきという声が私どもの中にもありますが、私どもの仕事は市民と直接触れ合う仕事ですので、その時に文化の違いで問題を起こすことがあってはなりません。ましてや安く雇いたいという理由で実習生を使うというのは間違いです。
こうした考えでは委託業務で安く入札するとか、排出者から安請け合いしてしまうような状況から脱することはできません。適正料金というのを行政にも排出者にも訴え、値上げした分は社員にしっかり還元していくというような基本的な形をつくらなければ今後は続かないと考えています。
▽地域経済の再生、循環型社会実現の取組みに期待
斉藤 経済を上向かせるには皆で首を絞め合うのではなく、値上げを認め、還元していくことが重要です。やはり人手不足と待遇は切り離せないと思います。また別の角度から言えば、いま日本は深刻な少子高齢化の問題を抱えています。過去にベビーブームは2回ありましたが、その後が続かないのは若い人の給料が低い――正確には格差が生じていることも影響しています。
少なくとも結婚したい人は結婚して、子供をもてるだけの給料が、努力すればもらえるような社会にしていかなければなりません。振り返れば非正規雇用も増えましたし、とにかく人件費をカットされてきた世代の人たちが結婚できない。それが少子化の遠因になっています。これを解消しない限り、日本は本当に先細りになってしまいます。
待遇が良ければ優秀な人材も集まります。それはカーボンニュートラルの実現、循環型社会を構築することにもつながります。
――全清連の地域脱炭素、循環型社会構築に向けた取組みについては……。
三井 私はいま、環境省中央環境審議会に設置された「静脈産業の脱炭素型循環システム構築に関わる小委員会」の専門委員として、全清連を代表して任命を受けています。昨年8月から12月まで計5回小委員会が開催され、今年1月に取りまとめがありました。
日本の温室効果ガス排出量のうち、廃棄物分野から排出されるのは約3%と言われているのですが、資源循環による効果を加えれば排出削減効果は約36%に達するとのことです。これを踏まえて取りまとめでは動静脈産業の連携、市町村との連携ということが大きな柱として打ち出されました。
そうした中で、令和4年4月にプラスチック資源循環促進法が施行されました。今までリサイクルしていた容器包装プラスチックに加えて、使用済みプラスチック製品等についても市町村にリサイクルの努力義務が設けられました。私どもも全清連のメンバーに取り組む意思のある人は積極的に取り組んでください。地元市町村と協議をして足固めを進めてくださいと呼び掛けています。
▽新たなニーズに対応し、信頼される業者へ変革を
斉藤 プラスチックのリサイクルについては、ご存知かと思いますが、EUにおいて2035年までに自動車に使用されるプラスチックの25%を再生材とする規制案が示されたことで、自動車業界でも非常に関心の高い問題となりました。
三井 斉藤先生がおっしゃるとおり、規制案が導入されれば日本から輸出する車もクリアしなければならない課題となります。25%というのは自動車の廃材だけで確保しようとしても不可能で、いろいろなところから再生材を集める必要があります。
ただ再生材が使える部品、使えない部品があると思いますので、これも国土交通省や経済産業省、メーカーなどの関係者が集まって議論することが必要と小委員会で申し上げました。そういうことがあって初めて動静脈の連携と言えるようになります。
また先ほど少子高齢化にも触れられましたけれども、私たちもローカルSDGsへの貢献の一環として、こうした地域の問題に取り組んで行く必要があると思います。一般廃棄物の適正処理、業務品質の向上に加え、お年寄り世帯からのごみ収集をどうするのか、空き家対策、生前整理など、近年の問題にどう対処していくかということが求められています。
斉藤 地球温暖化問題に向けたカーボンニュートラル、循環経済への移行、少子高齢化と地方創生、物価高騰など日本は非常に難しい局面を迎えています。こうした中で全清連の災害支援、SDGsの実現に向けた取組みは非常に心強く感じます。更なる飛躍・発展に期待しております。
年頭所感
◎環境省環境再生・資源循環局次長 角倉一郎「適正処理確保と循環経済移行へ施策展開」
◎ 農林水産省大臣官房新事業・食品産業部外食・食文化課課長 五十嵐麻衣子「循環型社会の構築に向け、食品リサイクルを一層推進」
◎ 経済産業省産業技術環境局資源循環経済課課長 田中将吾「サーキュラーエコノミーの実現に向けて」
福岡・熊本・広島で令和5年度研修会開く
「適正処理、持続可能な地域づくりへ」
全清連の会員団体が実施する研修会が1月から2月7日の時点で3地域で開催された。1月25日に福岡県清掃事業協同組合連合会(福清連)青年部研修会、同26日に九州ブロック協議会研修会、2月7日に広島地区研修会がそれぞれ行われ、一般廃棄物の適正処理の確保、持続可能な地域づくりに関する近年の課題について研修した。
◇広島地区研修会では家財整理の現状を講演、来賓に三井崇裕名誉会長ら
広島地区研修会は、広島市のリーガロイヤルホテル広島で開催された。来賓には岸田文雄内閣総理大臣や地域廃棄物適正処理推進議員連盟の斉藤鉄夫幹事長、寺田稔事務局長らの代理秘書など多数の出席があり、全清連の三井崇裕名誉会長も出席した。三井崇裕名誉会長からは「私たちは廃棄物処理法の枠組みの中で存在している。市町村の処理計画に基づき地域環境を保全するという大きな使命を持っている。一方で近年は人手不足に悩まされ、いずれは業務に支障が生じる可能性もある。そういう中で委託業務の入札化によって予算を削減するような市町村もあり、先行きを非常に心配している。現場では同じ人間が働いており、今のやり方で本当に業を維持できるのか考えていただければ」と挨拶があった。
この後の講演は、環境省中国四国地方環境事務所の横山貴志子資源循環課長、(一社)家財整理相談窓口の林武広代表理事、全清連の山田久専務理事が講師を務めた。この中で林代表理事は「家財整理の現状について」と題して、近年ニーズが増加する家財整理の適正な業務について解説した。
(詳細については全清連ニュース第110号をご参照ください)