平成29年度の全国研修大会実施報告
平成29年度『全国研修大会』を開催
―進むべき道は廃棄物の適正処理の推進―
一般社団法人全国清掃事業連合会(全清連・三井崇裕会長)は10月25日、東京千代田区の砂防会館において全国から600名を超える会員や多数の議員連盟国会議員、関係省庁幹部らの出席を得て、平成29年度「全国研修大会」を開催した。冒頭のあいさつで三井会長は、昨年の廃棄物処理法の定期見直しなどを含め我々を取り巻く情勢は変化してきており、問題が生起してくるであろうが「廃棄物の適正処理の推進、これを目指して、過去もそうでありましたが、これからもそれを目指してやる。進むべき道は一本です」と強調した。3日前に行われた衆議院選挙の余韻が冷めやらぬ中、駆けつけて頂いた地域廃棄物適正処理推進議員連盟会長の石破茂衆議院議員や議連の国会議員の方々のあいさつ、神戸大学大学院経済学研究科の石川雅紀教授によるダイコー事件の総括にする講演、全清連山田久専務による当面の事業方針の報告などがつづき、有意義な研修大会となった。
三井会長あいさつ
過去もそしてこれからも、廃棄物適正処理推進の道
全国研修大会は開会の辞に続き正面の国旗および全清連旗に向かい出席者全員で君が代を斉唱したあと、全清連を代表して三井会長が壇上に進みあいさつを述べる。
平成28年度に廃棄物処理法の定期見直しが行われ、今年6月に法改正が公布。公布されない部分は通知等により措置されたと述べた三井会長は、続けて「私たちを取り巻く情勢は刻々と変化してきております。直近では規制権限の及ばない第三者の問題がございまして、これは悩ましい問題ではありますけれども、これも3月21日、そして6月20日に通知を発出いただきました。ただ一方では、相手方のほうは、皆さんご存知のように違法ではないという解釈に立っておられるということで、この問題については私どもこれから非常にしんどい戦いがあるんではないかという風に予測されます。また、今日は神戸大学の石川先生の講演がございます。この講演もダイコー問題を捉えて、先生の考え方をおっしゃると思いますので、最後まで研修していただきたいと存じます」と一廃処理業界を巡る課題などについて触れた。そして最後に「これからますます我々を取り巻く問題が生起してくるでありましょうけれども、強い意識ですね、廃棄物の適正処理の推進――これを目指して、過去もそうでありましたが、これからもそのことを目指してやるしかございません。進むべき道は一本ですので、深くご理解を賜って、最後までお付き合いをお願いしたいと思います」と強調して締めくくると会場からは大きな拍手が湧き上がった。
石破議連会長あいさつ
ブローカー問題で、法の形骸化を懸念
続いて地域廃棄物適正処理推進議員連盟会長の石破茂衆議院議員が、議連を代表してあいさつ。「廃掃法という法律は法律の中でも難しい法律でありまして、ぱっと読んだだけでは何が書いてあるのかよくわからんというところがございます」と切り出した石破会長は、「ただ、趣旨としてあの法律は第6条、第7条というところがポイントであると私は理解をいたしておるところでございます」と市町村処理責任を指摘。しかし「法律はいま、会長からお話があのましたように、いろんな考え方が成り立ちますもので、いわゆるブローカーというものが、我々は違法ではないんだというのですが、ぎりぎり考えるといろんな議論があるんだと思いますが、たぶん、法の形骸化というのはこういうことを言うのだろうと思っております。そういうブローカーが暗躍することになりますと、廃掃法6条、7条の趣旨というのはまったく生きてこないことになります」と懸念を示した。
議連の国会議員のあいさつは、議連副会長の野田聖子議員、事務局長の寺田稔議員をはじめ山本幸三議員、岸田文雄議員、二乃湯智議員らを含め多数から祝辞が寄せられ、つづいて環境省、経産省、農水省幹部らのあいさつが述べられた。
講演・ダイコー事件の総括
排出事業者責任とは
休憩を挟み第2部は講演会、第3部は当面の事業方針についての説明が行われた。
神戸大学大学院経済学研究科の石川雅紀教授を講師に迎えて開かれた講演会のテーマは、「ダイコー事件の総括―そこで問われたことは何か?」。平成28年1月にカレーチェーンを全国展開するココ壱番屋(ココイチ・愛知県一宮市)が、産業廃棄物(冷凍ビーフカツ)の処理を産廃処理業者のダイコーに委託したが、処理されずに不正転売されたこの事件は世間を騒がせた。当時、マスコミの報道や社会の風潮は「壱番屋は被害者。対応は立派。わるいのは産廃処理業者だ」というものだった。これに対して石川教授は「壱番屋が真っ白だというのは何かおかしい。ひっかかる」と自身の受け止め方を語る。それは、汚染者支払いの原則(PPP)によれば、「自分の出した廃棄物がどうなっているのか、管理していないのは明らか」ということになり、ダイコー、みのりフーズと並んで、ココ壱番屋も汚染者であるという結論に達する――。石川教授はこの事件をきっかけに、排出者責任とはどういうことなのか、論を展開する。
当面の事業方針
環境省発出の7本の通知の理解を深めよ
第3部では「当面の事業方針」が山田久専務理事より説明された。
環境省はこれまで、一般廃棄物の適正処理推進に関して7本の通知を発出している。山田専務はこの7本の通知を改めて整理し、その重要性を説明した。発出された7本の通知はリンクしており、ひとつの「かたまり」となっている。一廃処理業者は理解を深め熟知しておく必要がある。たとえば、「6.19通知」(平成20年6月19日付)と「10.8通知」(平成26年10月8日付)は、ワンセットになっている。6.19通知が発出された平成20年の時代背景を山田専務はこう説明する。「平成5年からバブルが崩壊した。失われた20年ともいわれている。景気はデフレになった。そうするとどういうことが起きたかというと、規制緩和です。要するに規制を撤廃せよと。そうすることによって経済活動が活発化すると。だから市町村もどんどん許可を出し、入札、入札となった」。その時に6.19通知が出た。「一般廃棄物処理業の分野に規制緩和が押し寄せたときに、環境保全の重要性ということが一番最初に書いてある。当時は環境保全の重要性ではなく、経済合理性を優先するという社会なんです。市町村も何から何まで入札すればいいと。議会から責められますからね」。それだけに6.19通知の意義は大きい。
しかしながら通知が出て、自分たちが許可乱発や入札をしている市町村は、こういう状態をまずいなと思いながらも、議会にどう説明していいかわからない。「だから流れがなかなか変わらなかったんです。そして三井会長をはじめ、全清連の方々がこれだけではだめなんだと。環境省が出してくれた通知は今の規制緩和の流れを止めたけれど、止めただけで市町村は変わらない。何とか実効性ある措置を」となって、10.8通知が発出された。この10.8通知には、1月に出された最高裁判決の趣旨というところがある。ここが通知の一番重要なところ。「それを読みますと、平成26年1月28日の最高裁判決は、廃棄物処理法において一般廃棄物処理業は専ら自由競争に委ねられる性格の事業とは位置づけられないと言えるとしており」となっている。「最高裁の判決を引用して環境省の通知に出たということ。これが非常に大きいんです」「議会の先生が入札にせよとか、許可をどんどん出せとかやるわけです。それに対して10.8通知を読んでください。こういうのが国から出ていますよ。最高裁の判決ですよというと、市議会や県議会の先生は黙ってしまう。そういう内容なんですね」。
また、「8.30通知」(平成11年8月30日付)は、「ブローカー問題を取り上げた始まりだったが平成28年ぐらいまでの15年ぐらいの間にぐちゃぐちゃになってしまった」。ブローカー問題が深くなり、ダイコー事件が起きた。それがために排出事業者責任の徹底を示した「3.21通知」(平成29年3月21日付)が出て、「6.20通知」(平成29年6月20日付)であるチェックリストにつながっていく。
さらに「3.19通知」(平成24年3月19日付)は、「使用済み家電の不用品回収業者対策」であり、「1.20通知」(平成28年1月20日付)の「許可なく一般廃棄物が収集運搬された事案について」とは、同志社大学で同大学の子会社が一般廃棄物を無断で自己処理と称して、自己搬入といってやっていたものを摘発した事件。「いずれも無許可業者です」。
「無許可業者、ブローカー対策……。いまここにおられる皆さんが日常的に深くかかわっている問題なんです。どうかこの7本の通知を暗記するぐらい勉強して、行政の方ときちんと打ち合わせをしていただきたい」。最後に山田専務はこう締めくくって説明を終えた。
研修大会はこのあと大会決議、スローガン採択とつづき、最後は恒例となった「ガンバロー・コール」で滞りなく終了した。
(研修大会の詳細は、11月下旬発行予定の全清連ニュースに掲載)。