令和元年度の全国研修大会実施報告
令和元年度『全国研修大会』開催
地域が持続可能であるために
私たちができること、成すべきこと・SDGs
一般社団法人全国清掃事業連合会(全清連・三井弘樹会長)は10月23日、東京千代田区の砂防会館において令和元年度「全国研修大会」を開催した。全清連会員600名の参加をみて開催された今研修大会のメインテーマは『地域が持続可能であるために――私たちができること、成すべきこと・SDGs』。人口の減少ならびに少子高齢化が急速に進む日本。こうした状況にあっていま最も問われているのは、持続可能な地域づくりということだ。このことは国の第五次環境基本計画の重要な柱である「地域循環共生圏」に通底しており、さらに地域循環共生圏という概念は、2015年に国際社会193カ国が決定したSDGs(持続可能な開発目標)を受けてのものといえる。地域の持続が不能に陥ってしまうと、そこに位置する企業や社員や家族も将来的な持続性を維持できない。一般廃棄物処理事業に従事する全清連会員企業は、これまで遂行してきた地域の生活環境保全と公衆衛生向上業務が、SDGsに重ね合うことを確認するだけでなく、持続可能な地域にするためにはどうしたらよいか課題を洗い出し、行政や地域住民、他業界事業者と連携して考え、何らかの役割を担っていく必要がある。研修会ではSDGs・地域循環共生圏づくりに取り組む全清連会員企業5社の事例発表も行われ、持続可能な地域づくりを深く考える場となった。
全国研修会は、台風19号で犠牲になられた方々に全員で黙とうを捧げたあと開会となった。
第1部では全清連を代表して三井弘樹会長のあいさつ、来賓の地域廃棄物適正処理推進議員連盟の石破茂会長をはじめ出席した先生方、さらに環境省、経済産業省、農林水産省から幹部らのあいさつと続いた。
第2部は全清連会員企業5社によるSDGs・地域循環共生圏づくり取り組み事例発表。
続く第3部では全清連の山田久専務理事が「地域が持続可能であるために、私たちができること、成すべきこと・SDGs」と題して問題提起した。
このあと大会決議および大会スローガンの採択へと進んだ。
三井会長あいさつ
持続可能な地域・会社・社員・家族……であるために
三井会長はあいさつの中で、台風19号による災害支援活動と研修大会の意義の2つについて述べた。まず、「改めてこのたびの台風19号による犠牲者の方々のご冥福をお祈り申し上げるとともに、被災にあわれた方々にお見舞い申し上げます」と述べたあと、災害支援活動については10月15日に環境省から全清連に対して正式に災害支援要請が出されたことを報告した。「全清連として組織的にどうすべきかを検討してまいりました。環境省さんとも相談させていただきながら地域の状況、被災の状況等々を総合的に判断いたしまして、長野県長野市、千曲川のあたりですが、そこへ支援活動に入るということを正式に機関決定いたしました。皆様現地に入られると思いますが、この場で皆様にお願いしたいということで、いまお話させていただきますことをご理解いただきたい」と要望した。現地支援活動は第1陣が10月26日に、第2陣は11月2日にそれぞれ入ると予定を説明。
10月19日に現地との打ち合わせを兼ねて、三井会長を含め全清連幹部6名で現場を見て回った。「今まで東日本大震災、熊本地震、広島の土砂災害、西日本豪雨災害など、支援活動をしてまいりました。そのときの経験値があると思っていたのですが、その時の状況とは似ている部分と、まったく異なる部分があります。千曲川の穂保地区。リンゴ畑がありリンゴ農家があるところですが、それを見たときは愕然というか、手のつけようがないというか……。そんな思いで帰ってまいりました」と現場の惨状を説明した。「地元の住民の方は相当なフラストレーション、やり場のない気持ちで日々撤去作業をされております。そういうところへ行く我々は、そういうことを想定して行かなくてはなりません。非常に苛酷な作業です。精神的にこちらもフラストレーションが溜まる時もあります。しかしながらこれは、復旧・復興するための第一歩であると思っていただきたい。そこはぐっと我慢して作業にあたっていただきたいというのが私の切なる思いです」と被災地の人たちの気持ちを思いやるよう要請した。
研修大会の説明に移った。「本日の研修会は、地域が持続可能であるために私たちができること、成すべきこと・SDGsというのがメインテーマになっています。これは地域が持続可能であるためには、持続可能な会社をつくるためには、持続可能な社員を育てるには、持続可能な家族を守るためには、ということであります。いままで我々がやってきたこともSDGsです。しかしながらまだ足りないことも沢山あります。それをひとつずつ積み上げて進化する。前に進む。これが全清連のSDGsです。決して難しいことをやってほしいということではありません。そういうつもりで今日の研修会を聴いてもらいたいと思います」。 最後に三井会長はお礼と報告として、全国清掃事業連合会の代表者として10月22日に執り行われた「天皇即位礼正殿の儀」に参列したことを述べた。「環境省より全清連が参列の対象者として推挙いただきまして、たまたま私がいま代表でありますので昨日、宮殿の豊明殿の間に参列してまいりました。たぶん、もう二度と入ることがないだろうと思いながら一歩一歩かみしめて歩いて帰ってきました。改めて令和を迎えて我々全清連は、日本国のために、地域のために何をすべきかを考えると心が震えて、身体が震えてたまりませんでした。このことは全清連が石破議連会長をはじめ、多くの議連の先生のご指導の下、あるいは環境省のご指導の下の賜物と思っております。改めてお礼申し上げます。先代から今日皆さんにお集まりいただいたご尽力の結果であります。このこともあわせて御礼申し上げます」と締めくくった。
議員連盟・中央省のあいさつ
地域廃棄物適正処理推進議員連盟を代表して会長の石破茂衆議院議員のあいさつ(要旨)=今日の全国研修会はSDGsのお話がメインかと思います。最近日本語に訳しにくくなってきておりますが、SDGsはSustainable Development Goals 。持続可能な開発目標ということなんだそうです。ということを今掲げなくてはいけないということは、この我々が住んでいる地球も、我々が暮らしている祖国日本も持続可能ではない。次の世代にはないかもしれないという危機感がなければこうした言葉は登場いたしません。
日本人が今1年に45万人ずつ減っています。昨年1年間で北海道から沖縄まで、小中高等学校あわせると500校がなくなっております。日本人はいま1億2700万人いるんですが、昭和22年~24年の団塊の世代の方は今の3倍生まれていますから、やがて1年に100万人減る時代が来るわけです。するとあと80年経つと日本人は5200万人になるのです。計算すればそうなる。日本人が5000万人を超えたのは明治の終わりのこと。「ああ、その頃に戻るんだね」と言う方が時々いらっしゃるのですが、それは全然違う。明治の終わりの5000万人というのは若い人がいっぱいいて、歳が上に行くにつれて人が少なくなるという時代だった。これから先はその逆なんで、若い人が少なくて歳が上がるほど人が増えるという人口構成になります。この社会はこのままではもちません。
日本国中47都道府県、1718市町村全部状況は違います。どうすれば一つひとつの地域で、このSDGsを達成するか、そしてそれぞれの皆様のお仕事があります。医療のお仕事、建築のお仕事、介護のお仕事……。それぞれの地域においてそれぞれの皆様において、いかにこのSDGsを達成するかということをやっていかなければなりません。
日本の国というのは先送りが文化みたいなところがあります。人口が増えて経済が伸びているときはいろんなことを先送りしても何とかなる。これから人口が減って、経済が急に伸びるはずがない状況にあって、先送りすればするほど次の時代にものすごく負担がかかるということであります。そんなことをやっていてはいいとは思わない。皆様とともにそのような社会をつくるために、私ども議連としても今後とも活動したいと思っております。
環境省環境再生資源循環局・山本昌宏局長のあいさつ(要旨)=三井会長からお話がありましたように、三井会長自ら台風19号の被災地に入っていただき、長野市におきまして災害廃棄物の処理のお手伝いをいただけるということで、本当にありがとうございます。この災害だけでなく、東日本大震災以来、たび重なる災害ごとにいつも迅速に頼りになるご活躍をいただいておりますこと、まずもって御礼申し上げます。 本日の研修会のテーマであります、まさに持続可能な地域をつくっていくSDGsを考えるということについては、本当に皆様方のお仕事そのものが地域の循環を担っていただいていると。これをどう地域の発展につなげていくのかということをしっかり考えるのが地域循環共生圏だと思っております。環境省としてこれから持続可能な世界をつくっていくうえで地域を持続可能なものにしていくということが一番大事であります。皆様と一緒に考えていきたいと思っております。
SDGs・地域循環共生圏づくり取組み事例発表
(SDGsは2015年9月の国連サミットで採択されたもので、国連加盟193カ国が2016年から2030年までの15年間で達成するために掲げた世界共通の17の目標(ゴール)。ひとつの目標につきおよそ10の細かなターゲットが示されており、合計169のターゲットにより17の目標が構成されている。17の目標をクリアしていけば持続可能な社会構築に近づくということになる)
取組み事例発表企業と報告者は次の5社。
1.㈱丸共(代表取締役・林隆生:新潟県、社員数:正社員68名パート社員25名)。
2.(有)三功(代表取締役・片野宜之:三重県、社員数:正社員60名アルバイト15名)。
3.藤野興業㈱(専務取締役・片山敏:大阪府、社員数:従業員142名、うち正社員117名)。
4.因幡環境整備㈱(総務部長・高塚雅史:鳥取県、社員数:従業員180名)。
5.(有)共栄資源管理センター(専務取締役・江口祥弘:福岡県、社員数30名パート含む)。
上記5社に共通する取組み事業として、一廃・産廃の収集運搬があげられる。廃棄物を収集することでまちの美化を保ち、公衆衛生の向上に資している。ルート収集やエコドライブなどを実施していれば省エネや気候変動対策にも取り組んでいることになる。これをSDGsの目標に重ね合わせると、「目標3.すべての人に健康と福祉を」「目標7.エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」「目標11.住み続けられるまちづくり」「目標12.つくる責任、つかう責任」「目標13.気候変動に具体的対策を」などにひも付けすることができる。 このほか5社はリサイクルをはじめ様々な取り組みをしている。たとえば丸共の場合は、産官学による廃熱を利用した水耕栽培の実証実験を進めている。これはSDGsの「目標2.飢餓をなくそう」「目標11.住み続けられるまちづくり」「目標17.パートナーシップで目標を達成しよう」に連携する。三功は食品リサイクル(堆肥化)に取り組んでいる。堆肥化して農作物を供給することは、焼却費用の低減、CO2削減、堆肥を地域の農家に使ってもらう、廃棄物資源化の地域循環システム――といった様々のキーワードが立ち上がる。SDGsの「目標7」「目標12」「目標3」「目標17」「目標13」のほか、「目標9.産業と技術革新の基盤をつくろう」「目標15.陸の豊かさを守ろう」に符合する。藤野興業は下水道の包括委託管理にも取り組んでいる。この場合はSDGsの「目標11」「目標12」「目標13」のほか、「目標6.安全な水とトイレを世界に」「目標14.海の豊かさを守ろう」がひもつけできる。因幡環境整備は、食品リサイクル・環境保全農業、空き家対策のための多量ごみの処理対応や施設見学の受入れなどにも取り組む。食品リサイクルはSDGsに重ね合わせると前出の三功と同様。「空き家対策」は「目標11」「目標12」「目標15」に、また「施設見学受入れ」による情報提供は、「目標4.質の高い教育をみんなに」と連携する。共栄資源管理センターは、太陽光発電システムを社屋・リサイクル受付センターに設置している。またエコドライブも推進している。これはSDGsの「目標7」「目標13」にひも付けできる。
問題提起:山田久専務理事
全清連山田専務理事より、今全国研修会のメインテーマである「地域が持続可能であるために私たちができること、成すべきこと・SDGs」を取り上げ問題提起が行われた。
「全清連は本年4月の定時社員総会において、結成20周年の成果を踏まえた新たな一歩を刻む令和元年度事業計画を決定しました。その新たな一歩とは、国際社会が決め、それを受けて日本政府も実施指針を策定したSDGsの取組みを、第五次環境基本計画の重要な柱である「地域循環共生圏構築」と重ね合わせて遂行しようという方針です」。山田専務理事は配布資料を読み上げつつ説明を加えていく。「全清連会員企業は、これまで遂行してきた地域の生活環境保全と公衆衛生向上の業務が、SDGsに重ね合うことを認識するだけでなく、会社と従業員ならびに家族が将来にわたり持続できるのかという視点で総点検できるようになります。また、地域社会が持続不能になっていく要素を洗い出し、それを持続可能にするためにはどうすればよいか、ということを行政や地域住民、他業界事業者と連携して考え、何らかの役割を担っていくことも地域循環共生圏づくりの一環と言えます」。
全清連会員企業が遂行してきた業務をSDGsに重ね合わせるということは「ひも付け」ということだ。さらに地域社会が持続不能(持続可能ではない)に陥っていく要素を洗い出し、持続可能にするにはどうすればよいかを、地域関係者を巻き込んで考えていき、行動に移していく――。
「これらの考え方を別な表現でいうと、「我々の業を持続可能なものにするには、これからは受け身、守り一辺倒ではなく、会社の内外に対しても持続可能性の観点で提案型の姿勢に転換していく必要がある」と訴えた。
(研修大会の詳細は、全清連ニュース第95号をご参照ください)